在日の名前2018/07/29

 2018年7月25日付けの毎日新聞の「みんなの広場」欄で、次のような読者投稿が掲載されました。 ちょっと気になったので、全文を引用します。

日韓の歴史と私の名前   安倍 秀賢

「安倍‥‥、さん」。病院の待合室で響く自分の名前。 私は、「またか‥‥」と思いながら、小さく返事をする。 私の下の名前は「秀賢」と書いて「スヒョン」と読む。 日本で正しく読まれることはまずない。 両親は韓国人である。正確には韓国人だった。 数年前に日本国籍を取得。 今は普通の日本人としての生活を送っているが、島国文化だからなのか、日本という国は「異国民」にとても敏感である。 グローバル化してきたとはいえ、まだまだ住みづらいのが現状だと強く感じている。

背景には、日韓の歴史が大きく関係しているとも感じる。 長年お互いの主張が異なるのだから、たった数年、数十年で関係が良くなるとはなかなか考えにくい。 どうしても生きづらい世の中であるが、私自身が、自分の名前に誇りをもって生きていけるようになりたいと願う。

 本来は投稿者名を出すことは控えるべきなのでしょうが、内容が自分の名前に関することなのでそのまま出しました。

 「スヒョン」は、「秀賢」のハングル読みです。 数年前に両親とともに帰化し、帰化後の姓が「安倍」ということですから、「安倍 秀賢」が戸籍上の本名で、読み方は「アベ スヒョン」となることが、この投稿から分かります。 

 ところで日本人の名前は、戸籍では漢字・ひらかな・カタカナで表記され、漢字の場合どのような読み方をするかは自由です。 近ごろは両親が子供に凝った名前を付けることが多くなり、何故こんな読み方をするのか理解できないような場合がよく出てきます。 小学校の先生が新入生の名簿を作成する時、こんな名前が増えてきて、ちゃんと振り仮名を付けてくれなければ読めなくて困ると嘆いておられましたねえ。

 ここで秀賢さんに戻りますと、普通の日本人ならば、「秀賢」という名前をみて、「ひでたか」さんなのか、「しゅうけん」さんなのか、「スヒョン」と振り仮名されてもその通りに発音していいのかと迷うことになります。 漢字のハングル読みは、ほとんどの日本人には不可能なことだからです。

 ですからご自身が、「秀賢」は「スヒョン」と読みます、私は韓国人だったのでそういう読み方の名前になっています、と言えば相手方は納得してそう読んでくれるものです。 つまり本人が「スヒョン」という読み方を明記し、その名前の由来を説明すれば済むだけの話です。

 しかし彼は日本人が「秀賢」を「スヒョン」とハングル読みできないことに対して、日本は島国で国際化していないからだとし、日韓の歴史問題にまで言及し、日本は「生きづらい」「住みづらい」と話を展開しました。 こうなると飛躍が甚だしく思えて、私には大きな違和感を抱きます。