法を軽視する韓国の民族性2013/09/01

 韓国人は法律について日本とは違う価値観を有していることは、これまで何回か論じてきました。

 このことは私だけでなく、他にも何人かの人が以前から論じてきた来たことです。 今日は毎日新聞がこれについて記事にしました。

 韓国が日本とは異なる法意識を持っていることが、ようやく大手の新聞(しかもこれまで韓国寄りだった毎日)に載ったということです。記事は韓国の司法の「理解を超える判断」「特異な判断」を主に取り上げていますが、「法の支配」の観点からの日韓の法意識の違いにまで言及しています。 

http://mainichi.jp/select/news/20130901ddm002030137000c.html http://mainichi.jp/select/news/20130901k0000e030166000c2.html

従軍慰安婦問題:対応「違憲」決定2年 韓国司法、摩擦の根 戦後補償、「解決済み」の日韓見解覆し        毎日新聞 2013年09月01日 東京朝刊             【ソウル澤田克己、大貫智子】慰安婦問題での韓国政府の「不作為」を違憲だとする韓国憲法裁判所の決定から、8月30日で2年となった。韓国ではその後、日本から「理解しがたい」と批判の強い司法判断が相次いで出されており、今や日本側の対韓不信の中心は「韓国の司法」の様相だ。一方、韓国の朴槿恵(パククネ)政権は歴史認識問題での強硬姿勢を崩していない。安倍晋三首相と朴大統領は5日からロシアで開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議で顔を合わせるが、会談は開催されない見込みだ。            韓国憲法裁は2011年8月30日、「日本国によって行われた組織的かつ持続的な不法行為によって人間の尊厳と価値を深刻に傷つけられた自国民の賠償請求権を実現させ、保護すること」が憲法によって求められているとして、韓国政府が外交努力を講じなかったことを「違憲」とする決定を出した。             韓国政府はその後、元慰安婦の賠償問題に関する政府間協議の開催を日本に求めた。            日本側は、韓国との戦後補償問題の解決を図った1965年の日韓請求権協定で慰安婦問題などは「解決済み」という立場で、韓国側の求めに応じていない。11年末に京都で開かれた日韓首脳会談は、慰安婦問題を巡り首脳間の感情的対立に発展した。            日本側をさらに驚かせたのは、韓国最高裁が昨年5月、元徴用工の個人請求権を認め、協定で「解決済み」という日韓両政府の一致した見解を覆したことだ。             最高裁は、三菱重工業と新日本製鉄(現新日鉄住金)の2社を相手取った損害賠償請求訴訟で、植民地支配の合法性などについて日韓両国の合意がない中で締結されたことを理由に「協定で個人請求権は消滅していない」という判断を下した。審理はソウル、釜山の両高裁に差し戻され、今年7月に原告勝訴の逆転判決が出た。両社は最高裁に上告中だ。             韓国政府は盧武鉉(ノムヒョン)政権だった05年、戦後補償問題が日韓請求権協定で解決されたかどうかを検討。慰安婦問題などは「未解決」としたが、元徴用工については「(解決したと)見なさざるをえない」としていた。それだけに「徴用工に関する司法判断には韓国政府も困惑しているようだ」(ソウルの日本大使館幹部)。           今年に入ってからも、韓国司法は日本側の理解を超える判断を繰り返している。

 ソウル高裁は今年1月、靖国神社への放火を「政治犯罪」だとして、韓国で捕まった中国人容疑者の日本への引き渡しを拒否。さらに、2月には中部・大田地裁が、対馬から盗まれて韓国へ持ち込まれた後、韓国の仏教界から「もともとは韓国のものだ」という主張が出た仏像の日本への返還を当面差し止める仮処分決定を出した。        一方、韓国の司法による特異な判断は日本関係に限らないとの指摘もある。             憲法裁は今年3月、70年代の独裁下で政治的集会などを禁じた大統領緊急措置3件について「違憲」決定を出した。この時に判断基準とされたのは、87年の民主化で制定された現行憲法。当時は存在しなかった法律を遡及(そきゅう)適用したことになる。              韓国事情に詳しい小此木政夫九州大特任教授は「日本との法文化の違い」が背景にあると指摘。「韓国では、道徳的に問題かどうかという国民の情緒が重視される。半世紀前に結んだ条約でも正義に反しているなら正すべきだという考えが出てくる」と話している。              ◆「価値観の共有」遠く         日本での対韓認識は、李明博(イミョンバク)前大統領の竹島上陸(昨年8月)で悪化した。だが、最近は日本政府内から「韓国も法治国家になったと思っていたが、違ったようだ」(法務省幹部)という声が出るほどだ。悪化した日韓関係を韓国の司法判断がさらにあおる結果となっている。             対韓外交に関係する外務省幹部は、日韓関係の重要性を説明する際に必ず使われてきた「基本的な価値を共有している」という表現について「もう使うのをやめようという声が官邸内で出ている」と話す。「理解不能な判断を繰り返す韓国の司法を見ていると、法の支配という基本中の基本で違うという不満が強いから」だという。            一方の朴大統領は「正しい歴史認識」を日本に求める「原則」姿勢を崩さない。さらに、大統領に近い韓国政府高官は「首脳会談に応じないことなどで、日本には強い圧迫を加えている」と話す。            陳昌洙(チンチャンス)世宗研究所日本研究センター長は「10月の例大祭でも安倍首相が靖国神社を参拝しなければ、関係改善へ向けた水面下の協議は始まるだろう。だが、その時には集団的自衛権の解釈変更が問題となりそうだ」と、早くも懸念している。

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 ◇日韓関係に関する韓国の司法判断

2011年8月 憲法裁      慰安婦問題と韓国人被爆者問題で韓国政府の不作為に「違憲」決定

2012年5月 最高裁      元徴用工訴訟で個人請求権認め、2審判決を破棄差し戻し

2013年1月 ソウル高裁    靖国神社放火を「政治犯罪」として容疑者引き渡し拒否

     2月 大田地裁     対馬から盗まれた仏像の日本への返還差し止める仮処分

     7月 ソウル・釜山高裁 元徴用工訴訟の差し戻し審で原告勝訴の逆転判決

  日本が韓国と共通の価値観(近代的法治国家)を有しているという幻想は、そろそろ止めにするべきでしょう。

【拙稿参照】

韓国の古代的法規範意識         http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/10/27/1873691

韓国の法意識              http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/11/10/1900716

韓国の法意識(続)           http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/11/17/2393593

法に対する思想が根本的に違う日本と韓国 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/09/11/6570566

法より情を優先する韓国社会       http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/09/16/6575093

朴槿恵の謝罪―親の罪は子の罪か?    http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/09/25/6584335

韓国の非常識判決ー対馬の盗難仏像 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/02/27/6732313

法を守るという価値観          http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/05/11/1501343

加藤陽子「九条放棄されればカナダ国籍を取る」2013/09/04

 近代史研究者の加藤陽子さん。憲法九条が放棄されたら日本国籍を放棄してカナダ国籍を取るそうです。

http://mainichi.jp/feature/news/20130822dde012040015000c.html   http://mainichi.jp/feature/news/20130822dde012040015000c2.html

 「9条放棄の結果が出たら日本国籍を見放す」。昨年秋、社会学者の上野千鶴子さんと「婦人公論」で対談した際に言い切った。「9条を変えられるのはすごく嫌。あれだけの戦争をしてアジア諸国や日本に死者を出した後の憲法なのだから、誰がつくっても平和主義を柱にしたはず。その象徴が9条であり戦後、アジアに警戒されずに経済成長をひた走れたのも9条のおかげです」。上野さんも「国籍放棄」に同意見だったが、さすがに活字にするのはどうかと2人で悩んだ。「けれど、やっぱり正直な気持ちを残しておこうということになって。本当にそうなったらカナダ国籍でも取ろうかしら」

 カナダには九条のような憲法・法律はありません。カナダはNATOに加盟しており、従ってアメリカとは軍事同盟関係であり、集団的自衛権を有しています。カナダはアフガニスタンに派兵しており、アメリカ軍が攻撃を受ければ助太刀に馳せ参じます。カナダ軍が攻撃を受ければ当然アメリカ軍が助けに来ます。  そんなカナダの国籍を取りたいとのこと。

 自民党の議員らが「日本を守ろうとする米軍が攻撃されているのに、日本が反撃できないのはおかしい」と主張していることにいかがわしさを感じている

 加藤さんは、アメリカとの集団自衛権は、日本は駄目だがカナダならいい、という考え方をしておられるようです。おそらく九条も、日本だけが持つべきで、カナダなど他の国は必要ないと考えておられるのでしょう。

「三韓」は朝鮮の国家と民族を表す2013/09/10

 韓国の国史辞典では、「三韓」は馬韓・弁韓・辰韓とのみ説明されており、高句麗・百済・新羅の三国が「三韓」であったことには触れていません。また高麗が「三韓」を自称していたことにも触れていません。その理由はよく分かりませんが、『日本書紀』にある三韓関係記事(神功皇后の三韓征伐や、三韓からの朝貢など)を否定しようという意図があるのかも知れません。「三韓」に関する朝鮮側資料を集めてみました。

・扶余隆墓誌(永淳元年682年)  「気は三韓を蓋い、名は両貊に馳す」               (なおこれは唐に帰順した百済王族の墓誌である。従って中国側資料と言うべきものかもしれない。)

・『三国史記』新羅本紀 神文王12年(692)条   「一統三韓」

・『高麗史』太祖15年(891)5月条   「西京の地力に憑って三韓を平定し」

・『高麗史』睿宗18年(1122)の遺詔   「三韓を奄有すること十有八歳」

・高麗が発行した通貨  「三韓通宝」「三韓重宝」

・『朝鮮王朝実録』世祖3年(1457)3月条 「東国礼学文物の盛はただ渤海を称して、三韓はこれを与らず」

 以上は「三韓」が馬韓・弁韓・辰韓ではなく、高句麗・百済・新羅の三国を総合して言い表していることを示しています。高麗が自らを「三韓」と称するのは、高句麗・百済・新羅の三国を正当に継承したと自任しているのは明らかです。  また中国側資料にもありますので、中国史の概説書のなかで朝鮮半島に関わる部分で「三韓」が出てきます。例えば中公文庫『世界の歴史⑥ 隋唐帝国と古代朝鮮』(2008年3月)では、

・「三韓(朝鮮三国)と倭からの留学僧を指導し教授するために」(23頁)

・「平壌にみやこする高句麗は、三韓のなかで随一の大国であり、南の新羅と百済に圧迫をくわえていた」(208頁)

 また沖縄では「万国津梁の鐘」(1458年)の銘文のなかに

「鍾三韓之秀」(三韓の秀を鍾め)

という文言があります。年代からすると、高麗を引き継いだ李氏朝鮮になるでしょう。当時の沖縄は日本ではありませんでしたが、朝鮮とは交流がありました。その朝鮮を「三韓」と呼んでいたのです。

 朝鮮半島に成立した国家および民族を「三韓」と称することは、東アジアでは古代より共通していたと考えていいでしょう。

【拙稿参照】

「三韓」は朝鮮でも使っていた  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/05/25/1533306

『韓国・朝鮮史の系譜』(2)  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/05/04/6798932

豊田有恒『韓国が漢字を復活できない理由』2013/09/15

 韓国では漢字が廃止されており、今の韓国人のほとんどが漢字を読めなくなっています。こういう状態が続くとどうなるのか関心があります。呉善花さんも書いておられましたが、今回は本棚に積読していた豊田有恒さんの『韓国が漢字を復活できない理由』(祥伝社新書 2012年7月)を取り出して、読んでみました。

 豊田さんは昔から韓国について造詣が深く、韓国語もかなりできる方です。ですからその著作はそれなりに信頼できるだろうと思ったのです。読んでみて成程と感心する所も多かったですが、これはないだろう、と思える所も多々ありました。まずは、ちょっと酷いんじゃない?と思えるところから取り上げます。

韓国は‥‥(日本語を追放するという)努力は今も続けられている。折に触れて、追放すべき日本語風の用語リストを作成したりしている。   ここに、韓国の国語審議会の国語純化分科委員会が作成したリストがある。‥リストの名称は「日本風生活用語純化集」となっている。(32頁)‥‥‥さっぱりわけのわからない単語も、リスト入りしている。〈去来先(コレソン)〉とは、なんのことだろう。とうてい日本語とは思えない。去来は、よもや俳人の向井去来ではあるまい。調べたが、なんとしても判らなかった。(45頁)

 これを読んでビックリ仰天。韓国語の「去来(コレ)」は取引のこと。従って「去来先」とは取引先の意味です。念のため辞典を調べると、小学館『朝鮮語辞典』(1993年1月)では「去来」は基本語として星印でマークされ、訳には「取り引き」と太字で表記されています。「去来先」も当然採録されており、「取り引きする相手、取引先」となっています。

 もう少し古い辞典では、角川書店『朝鮮語大辞典』(1986年2月)にも「去来」「去来先」は採録されています。

 韓国の『国語大辞典』(성안당 1997.10)では、「去来先」は「去来処(コレチョ)」とし、参考として「『先』は日本語の『さき』の漢字であるが、『目的地、所、前、相手』などの意味を持つ。しかし我が国では漢字『先』は『先ず、前、初めて』の意味があるのみ。『相手、目的地』なんかの意味はない。だから『去来先、輸入先、行先地』のように日本式の意味で使われる『先』が入っている言葉を使ってはならない」と書かれています。

 韓国の去来(コレ)が取引の意味であることは、中級レベルで習いますし、辞書にも必ず載っている言葉です。こんな重要基礎単語を知らないとは‥‥!!

 これに関連してこの本の33頁の表のなかに、「純化対象用語」として「去来先(コレソン)」、これを純化した用語として「去来処(コレソ)」となっているのがあります。しかし「去来処」は「コレチョ」です。「コレソ」は「去来所」となり、取引所の意味です。例えば証券取引所は「証券去来所(チュンクォン コレソ)」です。つまり「コレチョ」と「コレソ」は、それぞれ「取引先」「取引所」と違う意味なのです。従って、この本で「去来処(コレソ)」とカタカナで読み方を書いているのは大きな間違いだということです。

 豊田さんがこんな簡単なことを知らないだけでなく、俳人の去来を持ち出してくるとは!! 本当にビックリしました。 豊田さんは「調べたが、なんとしても判らなかった」と書いていますが、本当は調べなかったということでしょう。

『韓国が漢字を復活できない理由』 (2)2013/09/18

 韓国語の単語には漢字に由来するものと、昔から使われていて漢字に置き換えられていないものとがあります。後者を「固有語」と言います。

韓国には、山、川に相当する固有語が存在しない。もともとは存在したのだろうが、漢語が入ってきてから消されたらしい。ちなみに、山は〈サン〉という。‥‥‥韓国では、川は〈カン〉である。漢字では江戸の〈江〉という字を書く。‥川に相当する固有語はない。(100頁)

 これにもビックリ仰天。「山」の固有語は「메(メ)」です。例えば「猪」を韓国では「멧돼지(メッテジ)」といいます。直訳すれば「山の豚」のことで、ここに「山」の固有語が入っています。これは辞典に載っています。

 「川」の固有語は「내(ネ)」です。これも辞典に明記されています。

 「멧돼지」も「내」も、基本単語として星印がつけられているぐらいに重要な単語で、中級クラスではすでに習う言葉です。そうであるのに、「固有語はない」と断定するとはねえ。

 なお「메」は「山」の古語で、今やほとんど使われることはありませんが、それでも一般向けの小学館『朝鮮語辞典』にさえ載っています。韓国の小学生向けの国語辞典にも、ちゃんと載っています。

『韓国が漢字を復活できない理由』 (3)2013/09/20

朝鮮王朝には、欧米世界の知識がなかったくらいだから、訳語もあるわけがない。これら新しい概念は、すべて日本語経由で入ってきた。 科学、化学、物理、算数、代数、幾何‥‥前方後円墳などなど。いちいち挙げるのが面倒になるくらい、学術語は、和製漢語ばかりである。(181~182頁)

 欧米の多くの学術用語が和製漢語に訳され、それが朝鮮に入ったのは事実ですが、その列挙された例のなかに「前方後円墳」があって、これまたビックリ仰天。「前方後円墳」は欧米とは関係ありませんし、訳語でもありません。これは18~19世紀の江戸時代の学者、蒲生君平が編み出した古墳の形を示す言葉なのです。従って「日本語経由で入ってきた」言葉ではありません。

 前方後円墳は日本独特の古墳の形ですから、韓国ではこの言葉は日本を紹介するなかでのみ使われます。普遍的に使われる学術用語ではなく、極めてローカルな言葉ですから、韓国ではほとんど使われることはありません。豊田さんは古代史にも詳しいはずですが、こんなことではねえ。ひょっとしたら勘違いではなく、本当に欧米から来た言葉と思っているのかも知れません。

韓国では、硫酸は〈ファングサン〉という。このパソコンでは変換しなかったが、酸の前にある字は、石偏に黄と書く。硫黄の意味だという。日本式の硫酸という言葉を使いたくないために、こんな難しい漢字を探し出してくるところが、さすが元漢字国である。(182頁)

 硫酸は今の韓国では「황산(黄酸)」です。かつては「磺酸」とも書いたようですが、「黄」も「磺」も同じ読み(황)であり、且つそれ自体に「硫黄」の意味があります。硫酸の製造原料が二酸化硫黄ですから「黄酸」と表しても意味は変わりません。      ところで「硫酸」はハングル読みすると「乳酸」と同じ(유산)になります。どちらも理科の実験や工場などで使いますから、「유산」というラベルの貼った薬品瓶が「乳酸」なのか「硫酸」なのか分からなければ大変なことになります。これを区別するために一方を「황산(黄酸)」と言い換えただけでしょう。少なくとも「日本式の硫酸という言葉を使いたくないため」という理由はあり得ません。 

 ところで日本では「磺」は「礦」の異体字で、訓読みが「あらがね」です。これがパソコンで出てこないとは、かなり旧式のパソコンを使っておられるようです。文筆を業とする方がこれではねえ。

『韓国が漢字を復活できない理由』 (4)2013/09/21

もっと複雑な単語もある。図⑤を見ていただきたい。【図とは、딹→TTALK→ッタク(ニワトリ)のこと】 左にも下にも、子音が二つも付いている。‥‥ちなみに、この単語は、ニワトリという意味である。こうした単語は、韓国では、固有語と呼ばれる。日本でいえば、大和言葉に当たる。(90~91頁)

 豊田さんは、この「딹」を使って発音の解説を10行にもわたってしておられます。ニワトリは韓国語で「닭」ですが、「딹」という表現もあるのかと思って探してみました。しかし日本の朝鮮語辞典にも韓国の国語辞典にもありませんでした。方言や北朝鮮の言葉にあるのかと韓国の国立国語院の『標準国語大辞典』で探してみましたが、やはりありませんでした。また「닭」の古語は今や使われていない昔の母音を使ったハングル(これは今のパソコンでは出てきません)で、「딹」とは全く違います。

 豊田さんが詳しく解説した「딹」は、どうやら昔も今も韓国には存在しないと言っていいようです。これを読者からお金を貰って出す本の中に、図も含めてほぼ一頁を使って解説するなんてねえ。

『韓国が漢字を復活できない理由』 (5)2013/09/23

日本語と違うところは、〈エ〉にあたる母音はなく、普通の〈エ〉は、〈オ〉と〈イ〉の重母音となるが、たにカタカナでは表記できない〈エ〉があるから混乱する。こうした重母音が難しいのである。(79頁)

ハングルは、重母音が発達しているから、日本語にない発音もたくさん存在する。同じ〈エ〉でも、タクシーはテクシーに近い発音になる。〈ア〉と〈エ〉の中間のような重母音、英語のアップルの〈ア〉だと思えば、正しい。この重母音は、日本では名古屋弁だけにある。海老フリャー(フライ)というときの発音だが、カタカナでは巧く表記できない。(82頁)

 豊田さんは日本語の〈エ〉にあたる韓国語の発音は、「〈オ〉と〈イ〉の重母音」と「〈ア〉と〈エ〉の中間のような重母音」の二種類あることを論じています。おそらく「에」「애」のことかと思われます。

 重母音とは二つ以上の母音が一音節で発音されることです。ですから重母音か単母音かは、ゆっくり発音した時に母音が複数出てくるかどうかで分かります。しかし韓国語の「택시(タクシー)」の最初の母音である「ㅐ」、いくらゆっくり発音しても母音は一つです。つまり重母音ではなく単母音です。

 次に名古屋弁の「リャー」の母音は、「イ」と「ア」の重母音のです。ただし「ヤ(ya)」は重母音ではないとする研究者がいるようですので、ここは曖昧にしておきます。いずれにしても、韓国語の「テクシ(タクシー)」と名古屋弁の「フリャー(フライ)」の母音が同じとはとても信じられるものではありません。

ところで英語のアップルの「ア」は重母音なのですかねえ。発音記号を見る限り、「ア」と「エ」の中間音であって、重母音ではないです。

 なおハングルでは、母音は「基本母音字」とそれを組み合わせた「二重母音字」とがあります。「ㅐ」は字形の上では基本母音字「ㅏ」と「ㅣ」を組み合わせており「二重母音字」と言われるものですが、これはあくまで字形の上でのことで、実際の発音は単母音です。

 発音上の「二重母音」と字形上の「二重母音字」との違いを混乱されたものと推測します。

『韓国が漢字を復活できない理由』 (6)2013/09/25

1990年代になると、またぞろ漢字復活の機運が熟してきた。漢字国から来た外国人観光客に便宜をはかるためとして、道路標識や看板などでは、漢字表記が併用されるようになった。当時は、中国本土からの観光客はなく、ここでいう漢字国は、つまり日本なのだが、そう明記すると、反発を買うことになるから、あえて特定しなかったのである。(60頁)

 具体的な資料が提示できませんが、私の記憶ではその当時は日本だけでなく台湾や香港の人をも対象にしていたと思います。当時韓国が進めた漢字表記は、日本の漢字ではなく韓国の旧来からの漢字で、台湾・香港で使われていた繁体字とほぼ同じものでした。例えば「学」は「學」と表記されていました。従って日本人観光客だけを目あてに漢字表記したというのではなく、やはり台湾や香港を含めた漢字使用国からの観光客のためのものと見た方がいいものです。

 「ここでいう漢字国は、つまり日本なのだが、そう明記すると、反発を買うことになるから、あえて特定しなかった」というのは、豊田さんの憶測と見ていいでしょう。

『韓国が漢字を復活できない理由』 (7)2013/09/26

1970年代‥‥さるシンポジウムの楽屋で、古代史を研究する学者から『三国史記』を読んでいないと聞いて、唖然とさせられたことがある。たとえば、日本史上の事件でも、韓国側の文献に書かれている場合がある。有名な邪馬台国の女王卑弥呼が、中国の魏だけではなく、新羅にも遣使したという記述は、日本側にも中国側にもないが、朝鮮の『三国史記』には載っている。比較研究したうえで、これが嘘なら嘘でも構わないが、読んだこともないというのは、専門家として問題だろう。(140~141頁)

 『三国史記』を読んだことはないと答えたという古代史研究者。どんな方かは分かりませんが、おそらくは『古事記』『日本書紀』のように吟味しながら読んだことはないという程度の意味の答えではなかったかと想像します。少なくとも、全く紐解いたことがないというのはあり得ないでしょう。

 1970年代ですから、すでに岩波書店の古典文学大系『日本書紀』は刊行されており、その多くの註では『三国史記』に出てくる事項を引用して比較しています。ですからその道の専門家なら、関連資料を読んでいないとあっては大恥ですから、当然『三国史記』を読んでいるはずです。

 次に『三国史記』の卑弥呼の記事ですが、これは『三国史記』の編纂・執筆者である金富軾が「魏志倭人伝」の一部を歴史記述に挿入したものです。朝鮮に古くから伝わる史料に基づくものではありません。何故なら『三国史記』では倭の女王を「卑彌乎」としており、これは明らかに「魏志倭人伝」に由来するからです。 卑弥呼は『日本書紀』神功皇后紀にも登場しますが、これも『日本書紀』編纂者が「魏志倭人伝」から一部を挿入したもので、史料価値は不十分と判断せざるを得ないものです。

 『三国史記』『日本書紀』にある卑弥呼の記事は、邪馬台国や卑弥呼そのものの解明には役に立たないと言っていいでしょう。邪馬台国・卑弥呼を論ずるほとんどの本が『日本書紀』の記事と同様に、『三国史記』の記事にも触れないのはこのためです。