ある大学での在日コリアンゼミー毎日新聞 ― 2019/08/15
毎日新聞2019年8月14日付けで 「在日コリアン『差別生んだのは、私たちの社会』 京都女子大ゼミ生学ぶ 座学や学校訪問、一から理解深め」 と題する長文の記事が出ています。 https://mainichi.jp/articles/20190814/ddl/k39/040/384000c
朝鮮半島にルーツを持つ在日コリアンについて、ほとんど知識がなかった京都女子大法学部の市川ゼミの3年生8人(20~21歳)がその歴史を学び、民族教育を行う朝鮮学校を訪れた。若い感性は何を受け止めたのか。
記事の冒頭がこれで、次にゼミでどのような発表をしたかを紹介しています。
和泉茉那さんらが「在日朝鮮人ってどんなひと?」(徐京植(ソキョンシク)さん著、平凡社)などを元に報告した。
日本が植民地支配をした1910年以降、朝鮮半島の人は日本臣民とされ、朝鮮語使用を禁じられ、戦争にも出兵▽終戦時、既に生活基盤が出身地になかったり、財産持ち帰りが1人1000円に制限されたり、帰りたくても帰れない人がいた▽敗戦後は一方的に外国人とされ、長い間、指紋押捺(おうなつ)が義務付けられた。公務員就任や弁護士資格の国籍条項、国民健康保険加入など数々の差別と直面し、一部は認められたものの、制限はまだ残る--ことなどを知った。
この中に間違いがいくつかあります。 「朝鮮語使用を禁じられ」とありますが、日常生活で朝鮮語を禁じられたことはありません。 家庭内や近所、友人同士で朝鮮語を使うことは自由でした。
また「敗戦後は一方的に外国人とされ」とありますが、敗戦直後に在日たちはもうこれで日本人でなくなったと解放を喜び、万歳を叫んだ歴史事実を知らないのでしょうか。 在日朝鮮人が外国人であることは彼ら自身の主張であり、また本国の韓国・北朝鮮政府の主張でもあったのです。
あるいはまた「数々の差別と直面し、一部は認められたものの、制限はまだ残る」とありますが、外国籍である限り日本国籍とは違う処遇になるのは当たり前のことです。 大学の授業での発表なら、批判する文献も含めて関連資料を出来るだけ読み込まなければならないのですが、教授はそんな指導をしていないのでしょうか。
「思っていた以上に多くの差別があった。日本は生きにくい土地なんだな」(塩田雅(みや)さん)、「韓国と北朝鮮を下に見る人がいる。歴史を勉強しないと、親から子へそういう意識が伝わるのでは」(井上真帆さん)などと感想を漏らした。市川教授が「知らへんことで、差別意識が強化される」と指摘した。
学生さんは「日本は生きにくい土地なんだな」と感想を述べていますが、これは間違いの認識です。 在日は日本が生きやすかったから日本に残ったのであり、北朝鮮や韓国という祖国では生きにくいから帰らなかったのです。 こんなことは在日一世のお年寄りから聞き取りを実際にやっていれば、すぐ分かることなんですがねえ。
ところで教授は「知らへんことで、差別意識が強化される」と指摘したそうですが、知ることによって差別意識が強化される場合もあることを学生に教えてほしかったですねえ。 昔、朝鮮高校生と抗争を繰り返していた日本の高校生に、日本がどれほど酷いことをしたかの歴史を教えてやったら、ようやった、もっとやっつけたらよかったのに、という反応になったというエピソードがありました。 歴史を知った彼らは、パチンコ屋に行くことを「朝鮮征伐」と称したといいます。
そして有志6人が6月末に京都市左京区の京都朝鮮中高級学校を訪ねた。1人を除き、初めての朝鮮学校訪問だ。民族教育の大切さを訴える講演や、「祖国訪問」と題して約2週間、北朝鮮に修学旅行をした女子生徒からの報告を聞くなどした。
ここまでやるのでしたら、学生たちは北朝鮮を是非訪問してもらいたいものです。 そこでは朝鮮学校の民族教育が目指すものがどういうものかを見せてくれます。 主体思想、先軍、苦難の行軍、喜び組、コッチェビ,公開処刑、強制収容所等々、しっかり勉強してほしいですね。 日本の学生なのですから、朝鮮学校の生徒とは違う勉強をしましょう。
拉致やミサイルに核実験……。北朝鮮は不気味で理解不能な国と思われがちだが、朝鮮半島が南北に分断される、つまり北朝鮮誕生につながる、そもそものきっかけを作ったのは誰だろう。知らないと見えてこないことがある。
これは毎日の大澤重人記者の言葉のようですが、大きな間違いがあります。 南北分断のきっかけを作ったのはアメリカとソ連であり、北朝鮮誕生のきっかけをつくったのは金日成とスターリンです。 北朝鮮を「不気味で理解不能な国」にしたのは三代世襲の金一族であって、いずれも日本は関係ありません。 日本は朝鮮を統一した状態で植民地支配してきたのです。 こういうことは、ちゃんと「知らないと見えてこない」ものですね。
次に在日コリアンの定義です。 おそらく大澤記者の解説と思われますが、次のようになっています。
戦前から戦中に徴用や出稼ぎなどのため日本に渡り、戦後も残留した朝鮮半島出身者とその子孫。広義では日本国籍取得者も含む。敗戦時には約240万人いたが、1946年には多くが帰国し約64万人に。在日韓国・朝鮮人、在日朝鮮人とも呼び、うち韓国籍の人を在日韓国人と称する。
10年の韓国併合後は日本臣民とされたが、52年のサンフランシスコ講和条約発効を期に日本国籍を喪失。大半が47年の外国人登録令で使われ始めた「朝鮮籍」と分類された。これは国籍ではなく、出身や民族を示す外国人登録上の「記号」。その後、韓国籍や日本国籍を取得した人も多く、在留外国人統計(2018年12月末現在)によると、韓国籍約45万人、朝鮮籍約3万人の計48万人。朝鮮籍は北朝鮮籍ではないが、北朝鮮の国籍取得者もいる。同国と国交のない日本政府はそれを国籍と認めていない。
新聞記者なら正確な数字を記すべきでしょう。 1946年の在日人口が「約64万人」とは、何を根拠にしているのでしょうか。 在日人口の正確な統計は、当初外国人登録の二重登録や不正登録が横行したので、1952年までは不明と言わざるを得ない状態でした。 「64万人」は1946年3月の引揚援護庁による数字と思われますが、実際に数えた数字ではありません。
その後、指紋押捺義務や外国人登録と食糧購入通帳(いわゆる米穀通帳)との照合が行われて、1952年からようやく正確な人口が把握されました。 それによると535,065人です。 64万人とは全然違う数字です。
また「在留外国人統計(2018年12月末現在)によると、韓国籍約45万人、朝鮮籍約3万人の計48万人」とありますが、この数字は戦後や近年に来日した韓国人(ニューカマー)が含まれています。 この記事では在日コリアンとは「戦前から戦中に徴用や出稼ぎなどのため日本に渡り、戦後も残留した朝鮮半島出身者とその子孫」と定義しているのですから、ニューカマーを除外せねばなりません。
この定義の場合の在留資格は「特別永住」です。 そしてその数字は韓国籍「約28万9千人」、朝鮮籍「約2万9千人」、計「31万8千人」です。 「48万人」とは全く違う数字です。 大澤記者はプロの新聞記者なのですから、記事に出てくる数字はちゃんと根拠を持ったものを出してほしいと思います。
【拙稿参照】
ニューカマーが特別永住者?!―毎日新聞 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/07/21/9131374
特別永住者数の推移 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2019/07/16/9129169
トルコ国籍の特別永住者?!―毎日新聞 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/10/27/7870629
米国籍などの特別永住者 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/09/15/1798285
特別永住の経過 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/08/25/1750381
特別永住制度の変更は非現実的 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/09/01/1762857
在日の法的問題は解決済み http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2007/09/08/1781500
在日の特別永住制度 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/06/14/6864389
毎日のコラム「平和をたずねて」への疑問(3) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/11/06/8991794
30年前の在日韓国人論―四方田犬彦 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/01/05/8762608
コメント
_ G19 ― 2019/08/21 14:50
_ mahlergstav ― 2019/09/17 14:20
朝鮮民族の特徴として、自分の正しさを主張するときには、他人や相手の劣等生を指摘することで、自分の正しさの根拠にする。自分の主張を裏付ける客観的な根拠には全く興味が無い。
これは日本人からすると子供の言い訳の典型なんです。子供は怒られたら、**チャンはもっと酷いといった言い訳をします。
彼らが指摘している日韓併合時の日本の「悪行」や朝鮮人が被った「被害」には、殆ど根拠はない。辻本さんが指摘されるとおりです。しかし、彼らはそんなことには何の興味も無い。
最近、「反日種族主義」で有名になりつつある李栄薫ソウル大学名誉教授もこの点を種族主義と指摘しています。
この人たちの活動は、韓国民の「反日」感情に拍車をかける。日本の劣等生をあげつらうのであるから、無根拠に韓国人の正当感に拍車をかけるのです。心ある韓国人にしたら我慢できないでしょう。朝鮮人を蔑視するのもいいかげんにしろと思うのです。
この「幼稚性」を笑うのは簡単ですが、我々も似たような「幼稚性」はあるわけで、そこを洗い出す良い材料になります。
韓国国民が「幼稚」なのは、長い歴史の積み重ねなので、すぐに改めることは難しいでしょう。問題は、今の文政権下での韓国政府、政治家、官僚、大統領が、この「幼稚性」を顕にしていることです。民意が「幼稚」ならば、啓蒙したり、飴で釣ったり、鞭で叩いて、世界に通用するようにコントロールするのが政府の役割。今の文政権は逆だ。
最近、GSOMIA破棄で米国が不満を述べたら、米国は韓国の立場に寄り添って、不満など述べるなと大使を呼びつけたようだが、本当に馬脚を現した。
韓国には、易地思之という熟語があるらしい。これは相手の立場で考えろということだが、韓国の場合は、他人は自分の立場を考えて行動しろということで、自分は必要ないと言うことのようだ。
一般国民が言うのには、大した問題ではないが、韓国政府が公式見解として表明したことで、文政権の異常性がわかります。
辻本さんは、韓国朝鮮の専門家のようだから、李教授を見習って、もっと厳しい指摘をしたほうが、日韓友好に寄与します。心ある韓国人も望んでいると思いますよ。
_ 海苔訓六 ― 2023/12/20 20:26
全然知らなかったのですが、以前ブログ主さまが北朝鮮のスパイ関連で紹介していた徐勝さんの弟さんなんですね。この人も北朝鮮のスパイだったんですかね?
_ 海苔訓六 ― 2023/12/20 20:42
いや、徐京植さんが蓼科の別荘にすんでいたのか知らんので完全に偏見ですけど。
_ 辻本 ― 2023/12/20 21:56
徐京植は確か四人兄弟で、長男が徐勝さんのはず。
徐勝さんと弟の徐俊植さんの二人が北朝鮮に密出入国したのは、本人が明らかにしていますので事実でしょう。
北朝鮮で何をしたのかを明らかにしていませんが、当然スパイ教育を受けたことは確実でしょう。
さらにその弟さんの徐京植さんは北朝鮮に行ったかどうか分かりませんが、兄の徐勝さんが言っていないので、北には行っていないと思われます。
従って、スパイ教育を受けていないと私は見ています。
https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/12/23/8753413
_ 辻本 ― 2023/12/20 22:06
このようなことは仲間同士の酒席の場で交わすバカな話と同じですので、不特定多数が読むコメント欄に投稿しないでください。
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「選択」したのです。 嫌ならどうぞ出て行って下さいとまでは言いませんが自分に不利な事は全て「差別」と主張する輩は、出て行っていただいて結構です。
但し偏見があるのも事実ですから、それはそれで日本サイドの問題です。