毎日が語るアイヌ問題 ― 2008/10/11
毎日新聞のコラムで、金子記者がアイヌ問題を記事にしています。
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20081010k0000m070136000c.html
私自身はアイヌについて詳しくはありませんが、ちょっと違和感を覚える記事です。疑問点を挙げていきたいと思います。
>70代の男性は最近、友人が陰で自分のことを「あいつはアイヌだから」と話すのを聞いたと明かした。>
この男性はアイヌ出身を隠して生きてきており、その友人が周囲にその出身を明かしたということなのでしょう。 とすると、友人は陰ではなく、本人のいるところで言えばよかったということなのでしょうか?
>この数字からは、教育や就職、結婚などで受けた差別が結果として生活苦につながり、次の世代も貧困から抜け出せないという“負のスパイラル”が見え隠れする。>
「教育差別」とはどういうことなのでしょうか?北海道の公教育は、生徒たちを平等に扱うのではなく、アイヌの子弟を特別扱いしてきたということなのでしょうか? 「結婚差別」とは、和人がアイヌとの結婚を忌避することと思われますが、これがどうして「生活苦」「貧困」と結びつくのでしょうか? また結婚差別がなくなるというのは、和人との婚姻関係が広がることでしょう。これは現在の状況では各家庭が継承してきたアイヌ文化を否定することに繋がるのではないでしょうか?
>かつて国のアイヌ民族政策は北海道開発の名の下に行われてきた。彼らの土地は国有化され、伝統的な生活の手立てである漁業や狩猟の権利は奪われた。アイヌ文化は否定され、「日本人」との同化政策が進められた。>
ならば、アイヌ人たちは明治以降の近代になっても、従来の狩猟・漁労生活のままで暮らすべきだったということなのでしょうか? また日本国家の一員となるべきではなかったということなのでしょうか?
>アイヌ民族の多くが今も貧窮している背景には国の差別的な政策があり、>
政府のアイヌ政策について、先に「同化政策」と言いながら、ここでは「差別政策」となっています。「同化政策」とは日本人として同等に扱うことであり、「差別政策」とは特別扱いすることでしょう。政府はアイヌについて、矛盾した政策をとってきたということなのでしょうか?
>今後は土地や資源の返還・補償といった先住権の中身が議題に上る可能性があり、国としても簡単に妥協できない場面が出てくるかもしれない。しかし国はまず過去の政策を反省し、アイヌ民族の主張に耳を傾けることから始めるべきだろう。>
金子記者は、過去の歴史から鑑みて、アイヌに対する特別優遇措置をせよ、という主張をしているようです。 同様の特別優遇措置政策は、最近まで行われた同和政策があります。この同和政策の経緯と結果を見ますと、はたして出身だけ(あるいはその血統を引いているということだけ)で特別優遇措置がとられることがいいのかどうか、極めて疑問に思います。
韓国の歴史資料改竄志向 ― 2008/10/12
韓国では来年には5万ウォンと10万ウォン札が発行されます。この紙幣の図柄で論争が起きているようです。
>【外信コラム】ソウルからヨボセヨ 新紙幣の歴史歪曲? 2008.10.11
韓国では来年、新しい紙幣として5万ウォン札と10万ウォン札が発行されることになっている。5000円、1万円札に相当するが、経済発展や物価上昇などから高額紙幣が必要になったからだ。新紙幣の人物も、時代を反映して初めて女性が採用され、5万ウォン札に李朝時代の賢母で名高い申師任堂が登場する。
問題は10万ウォン札。表の人物は抗日運動家として知られる政治家・金九(キムグ)で、これはこれで日本人としてはいささか落ち着かないが、裏面に予定されている19世紀の古地図「大東輿地図」をめぐって議論が起きている。この地図に日韓の領土紛争になっている竹島、韓国でいう「独島」を入れるべきかどうかというのだ。
この古地図の原本にはもともと島は見あたらない。それを紙幣に使用するに際し、島を書き加える案が検討されていた。近年の反日・独島愛国主義を反映した発想だが、これには当然、「古地図の改竄(かいざん)ではないか」「こんな歴史歪曲(わいきょく)をやったのではほかの件でも疑惑を招く」など批判の声が出た。
この古地図の写本には島を書き加えたのがあるという。紙幣の図案は一種のデザインだから島を加えてもいいじゃないかというわけだが、結局、政府・中央銀行当局は前政権の決定ということもあって発行をしばらく保留にしたという。それにしても“愛国”のためには古地図も書き換えていいとは、その大胆な発想には改めて驚く…。(黒田勝弘)> http://sankei.jp.msn.com/world/korea/081011/kor0810110334000-n1.htm
韓国における歴史観が民族主義的で、実証を軽視する傾向があることは拙論第91題で論じました。 http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daikyuujuuichidai
記事では >“愛国”のためには古地図も書き換えていいとは、その大胆な発想には改めて驚く> とありますが、実証主義が根付いていない韓国では驚くほどのことでもないでしょう。
>これには当然、「古地図の改竄(かいざん)ではないか」「こんな歴史歪曲(わいきょく)をやったのではほかの件でも疑惑を招く」など批判の声が出た> とありますので、このような実証主義的な観点が広まることを期待したいものです。
「日韓ネット」への疑問―「真相究明」は自分たちがすべきことでは‥ ― 2008/10/18
日韓併合100年を迎えて、「反省と和解の市民宣言運動」を旨とする「日韓ネット」という団体が設立されるようです。 (08年10月16日付け毎日新聞)
>日韓ネット:市民が設立へ 併合100年控え
日本の朝鮮半島支配が始まった1910年の「日韓併合」から100年となるのを前に、日韓の市民団体などが両国で「100年ネットワーク」を設立、連携しながら「反省と和解の市民宣言運動」を始める。日本側共同代表の戸塚悦朗・龍谷大法科大学院教授(国際人権法)らが15日、京都市内で発表した。日本側は25日に、韓国側は年内に設立する。
日本政府などに植民地支配の真相究明と謝罪を求める▽両国民の知識差を埋める▽支配の一翼を担った日本企業などに総括と運動への賛同を促す--ことが活動の柱。日本側では評論家の鶴見俊輔さんら約200人、韓国側で市民団体代表や宗教者ら約50人が発起人に名を連ねる。
25日には龍谷大(京都市伏見区)で設立総会を開催。元従軍慰安婦の韓国人女性や北朝鮮拉致被害者・蓮池薫さんの兄透さんら「国家犯罪の被害者」が登壇予定。>
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20081016k0000e040047000c.html
「活動の柱」が三点あげられていますが、そのなかに「日本政府などに植民地支配の真相究明と謝罪を求める」とあるのは、ビックリ。
「真相究明」という作業を相手にさせる――何と主体性のないことなのでしょう。
地道な仕事を自分では拒否して人にやらせる――こんな人間を何て呼べばいいのでしょうかねえ。
発起人200人のリストが出てこないのが残念です。
死刑の「閉鎖性」なぜ悪い? ― 2008/10/30
去る28日に二人が死刑執行されて、死刑制度について再び議論されています。
この議論のなかで、日本の死刑制度の閉鎖性を問題にする意見があります。
>特に国連事務局やEU外交官には、日本への不信感が強い。それは、先進主要国中、死刑維持国は米国と日本だけであることに加え、日本の死刑の閉鎖性のためだ。‥‥ 一方、今年の国連報告は、日本の死刑が本人にさえ直前まで知らされず、家族や弁護士には執行後にしか連絡されないとして、その閉鎖性を指摘。 > http://mainichi.jp/select/wadai/news/20081029mog00m040002000c.html
「閉鎖」の反対語は、「公開」です。 死刑の「公開性」を進めている国としては、北朝鮮があげられるでしょう。 広場に人を動員して集めて、その目の前で公開処刑します。死刑の「閉鎖性を否定」=「公開性」というのは、こういうことでしょう。
つまり死刑の「公開性」とは、晒し者にする、ということと同じです。逆に「閉鎖性」とは、晒し者にしない、ということです。 結局は、どの程度の「晒し方」がいいのか、という議論になります。
死刑の「閉鎖性」だけを問題にするのは、いかがなものかと思います。