韓国フェリー沈没事故―大統領の不用意発言2014/05/06

 去る4月16日午前、韓国の全羅南道珍島沖で乗客乗員476人を乗せた大型フェリー「セウォル号」が沈没する事故が発生。 救助された者は174名に過ぎず、死者260名、行方不明42名(5月5日現在)。 乗客に高校2年生の修学旅行生325人と引率教師14人がいたので、韓国社会が大きな衝撃を受けた。 この事故のニュースは当然韓国の方が詳しいので、私はずうっと韓国語のニュースばかり見ていました。

 朴大統領は事故の翌日(17日)に、周囲の反対を押し切って事故現場を訪問。 しかし現場では救助活動体制を整えて救助に全力を注がねばならない時であった。 そんな時に国家の最高責任者である大統領が訪れるとそちらにもかなりの人員を割かねばならないので、現場の混乱が増すだけである。 大統領は被害者家族が集まっている体育館を訪れると、救助活動の遅れを責め立てられた。 そして「皆様のおっしゃることは実行します」と言ってしまった。

 それから被害者家族たちは救助活動の中身に口を出し、要求するようになった。 いわく「民間の潜水士をもっと入れろ」「ダイビングベルを投入しろ」等々。

 救助作業には海軍や海上警察(海上保安庁にあたる)の災難救助隊の潜水士たちが全力で当たっていたのだが、被害者家族にはもどかしかったようである。 一方で民間の潜水士の一部が、救助に参加しようと来たのに拒絶されたとか言い出し、韓国マスコミもこれを取り上げたものだから、「何故民間の潜水士を入れないのか!」と詰め寄った。 先の大統領の言があったため、汎政府事故対策本部はこれを受け入れざるを得なかった。

 結果は予想通りのものだった。 民間の潜水士は個々の能力差が余りにも大きいため、チームを組んでやらねばならない救助作業には役に立たないのである。 その時の記者会見では「被害者家族の意思を尊重して行なった」という一言が付け加わった。 そこには、‘足手まといになるだけの民間潜水士は入れるべきでないのに大統領の一言のために仕方なく入れた、結果はやはり駄目だった、’という気持ちが込められていたのが歴々であった。 結局、対策本部が選んだ民間団体の潜水士のみが参加することになった。

 次に現れたのが「アルファ潜水技術公社」という民間団体。 ダイビングベルという機械を投入すれば潜水士は20時間も水中作業できる、これを使うように申し入れたら拒絶されたと言う。 これを韓国のマスコミが取り上げたものだから、被害者家族が「何故使わないのか!」と詰め寄った。

 ダイビングベルとは、ベル(鐘)のような容器を逆さにしてそのまま水中に沈めて中に空気を入れると、そこで潜水士が休憩できるというもの。 一々水上に上がらなくても済むから、作業効率が非常に高まる「優れもの」という触れ込みだった。 これも被害者家族が強く要望し、また大統領の言もあったことから無視できず、導入せざるを得なかった。

 結果は無残であった。 沈没地点が救助作業で非常に混雑しているところにダイビングベルが割り込んできたから、混乱をもたらしたのである。 さらにダイビングベル自体が予想通りに役に立たない。 それどころか危険なのである。 ダイビングベルは暖かくてまた潮流のほとんどない静かな海で、なおかつ周囲に誰もいない海でのみ使えるシロモノだった。

 これを導入し設置するためにかなりの人員と作業スペースを割かれてしまい、実際の救助作業に支障が生じたのである。 この時の記者会見でもやはり「被害者家族の意思を尊重して」という一言が付いた。

 「アルファ潜水技術公社」の李ジョンイン代表は、当初20時間潜水作業できると言っていたのが80分になり、全く駄目と分かると「これでダイビングベルの性能を立証するよい機会になった」と言う始末。 ダイビングベルを使えと主張した被害者家族はその「性能」を報道したマスコミに抗議するというが、マスコミに踊らされた自分たちを反省しない。 そのマスコミはダイビングベル投入の生中継までしようとしたが、駄目と分かると雲隠れ。 最初は無駄だからと拒絶しながらも後に受け入れた事故対策本部、そして被害者の家族の言うことは実行しますと約束した大統領。

 結局救助活動が遅れたことに対して、誰も責任を取ろうとしないままこの件は終った。 朴大統領の不用意な一言が事態を悪い方向に導いたとしか言い様がない。

 沈没フェリーの救助作業現場は潮流や深度3~40m、濁水などによる作業自体の困難さだけでなく、このように人的環境にも大きな問題を抱えている。 日本は事故発生当初に援助を申し入れたが、韓国側が断った。それには「また反日か?!」などと批判があったようだが、正解だったのではないか。

 もし日本の海上保安庁や自衛隊の援助隊が行ったとしても、その人的環境の悪さに巻き込まれる可能性があったのである。 韓国にしても、この人的環境の悪さを国内に押し留めることができたと言えるのではなかろうか。

 フェリー沈没現場は、事故発生後10日ほど経って救助ではなく遺体捜索活動となった。韓国の海警・海軍災難救助隊員たちは、トイレ・食事・休憩・仮眠空間の不十分な劣悪環境のもとで、仲間が疲労や潜水病で次々と倒れていくなか、必死に捜索活動を続けている。

コメント

_ 健介 ― 2014/05/06 20:01

>日本は事故発生当初に援助を申し入れたが、韓国側が断った。それには「また反日か?!」などと批判があったようだが、正解だったのではないか。

でしょうね。我国の大地震におけるアメリカの援助とはちがう。
 それらは皆韓国のことで、彼等がかんがえてすればいい。
 それよりも、韓国がどのような国であることが日本人にわかって、よかったのではないか。
 知人はその潜水作業能力のなさに驚いていた。
事故の経過を見ると、適切な行動をすればもっと助かったことは想像できる。
 全員避難せよと放送すれば、混乱がおきたであろうが、もっと助かった可能性はおおきい。
 我国政府の原発事故のときもアメリカの救援物資を確か民主党内閣は断ったという報道があったが、その後の事故の経過を見ると、援助物資をもらっても、とっくの昔にメルトダウンしていた。

 韓国より、自国の能力を日本人は見るべし。
事故は韓国で起きたから韓国人が自ら考えればいい事に過ぎない。
 船の改造がいい加減だったということですが、韓国は造船世界一だとか報道されていたが、何処が世界一なのだろうか。
 しかし海軍、警察においてもおそらく韓国はこのような事故に対応する能力は無いと思うから、パク大統領の発言がなくても、同じ結果になッたのではと推測する。

 とにかくその救助活動には驚いた。知人は韓国にはこれだけの事故の救助能力はないと、その映像を見て話していた。
 能力のないことはすべて当人の責任に過ぎない。

_ (未記入) ― 2014/05/16 08:13

>同じ結果になッたのではと推測する。

 勝手な推測が多いね。こんなコメントは公開しないほうがいい。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック