韓国の前官礼遇2014/05/28

 韓国の司法界における前官礼遇が問題となって、次期首相に指名されていた安大熙元最高裁判事が辞退することになりました。 毎日新聞の記事を紹介します。

http://mainichi.jp/select/news/m20140529k0000m030054000c.html

【ソウル澤田克己】韓国の次期首相に指名されていた安大熙(アン・デヒ)元最高裁判事(59)が28日、指名辞退を表明した。客船セウォル号沈没事故で引責辞任を表明した鄭火共原(チョン・ホンウォン)首相の後任として朴槿恵(パク・クネ)大統領から22日に指名されたばかりで、朴大統領には大きな打撃となる。       安氏は判事退任後の昨年、弁護士事務所を開設。5カ月で16億ウォン(約1億6000万円)の収入を得ていたことが判明し、問題視されていた。首相就任に必要な国会聴聞会を乗り切るのは難しいと判断した模様だ。           韓国では、判事や検事を退任して開業した弁護士が、口利きを期待する依頼人から高額報酬を得ることが社会問題となっている。         朴政権では昨年、初代首相に指名された金容俊(キム・ヨンジュン)元憲法裁判所長も息子の兵役逃れ疑惑などで指名辞退に追い込まれた。

 この記事の中の 「韓国では、判事や検事を退任して開業した弁護士が、口利きを期待する依頼人から高額報酬を得ることが社会問題となっている」 のところが前官礼遇です。 これについては、1年半ほど前の拙稿で論じたことがあります。

法より情を優先する韓国社会  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/09/16/6575093

法より情を優先する韓国社会の実例として、もう一つ「前官礼遇」を挙げねばなりません。 特に「平等」「正義」等を標榜する司法界における「前官礼遇」は、もうビックリするしかありません。 最近話題になった韓国映画「トガニ」は、障害者施設で実際に起きた強姦・強制わいせつ事件を扱っていますが、この映画のもう一つのテーマが「前官礼遇」なのです。         裁判官が職を辞して弁護士を開業するのは韓国でもよくあることです。 しかし韓国では、元裁判官が弁護士開業した直後に引き受ける裁判では、担当裁判官は先輩の弁護士を尊重して、そっちに有利なように判決を下すのです。有利といっても半端じゃなく、教え子少女強姦という重犯罪でも、懲役数ヶ月で執行猶予付きという超寛大な処罰(「トガニ」による)にしてしまうぐらいです。         つまり裁判官は、法や正義よりも、先輩・後輩の情を優先するのです。 これが韓国司法界の「前官礼遇」です。 従って裁判官を辞めて弁護士になった人は、それこそ超高値で弁護依頼が来るそうです。ほぼ100%近く勝訴できるからです。 ただし、この効き目は1年までだそうですが。

 韓国の前官礼遇はこれまで一部の人が問題にしていただけでしたが、今度はかなり大きな問題となったようです。 韓国はこれを機会に法治国家の道を歩んでほしいと思うのですが、どうでしょうか。 喉元過ぎれば熱さ忘れる‥ 元の木阿弥‥ なんてことにならないよう願っています。