関東大震災の日本人虐殺2016/09/15

 関東大震災では朝鮮人が多数虐殺されましたが、その具体的な数字はなかなか分かるものではなく、色んな数字が飛び交っていることは前に論じました。 一方、日本人も多数虐殺されている事実には、これまで言及しているものが少ないです。

姜徳相・琴秉洞編『現代史資料6 関東大震災と朝鮮人』(みすず書房 1963年10月)には、「㊙震災後に於ける刑事事犯及之に関連する事項調査書」と題する資料が収録されています。(370~449頁) 関東大震災の際に起きた事件を詳細に調査し報告した政府側の資料です。そこには朝鮮人虐殺だけでなく、日本人も虐殺された事件が報告されています。

第五章 鮮人と誤認して内地人を殺傷したる事犯  第一 概説  一、鮮人に対する殺傷の外、鮮人と誤認して内地人を殺傷したる事犯少なからず。 何れもその容姿、態度又は言語の情況等に因り鮮人なりと誤解を受け、自警団其の他の民衆の為に害を加へられたるものにして其の数八十九人を算す。 犯人は捜査の上之を明にすることを得たるを以て其の情最も軽きものの外は何れも之を起訴したり。其の数実に百八十七人に達せり。(433頁)

 被害者89人の内訳は、死亡58人、重傷13人、軽傷18人。  一方の加害者として起訴された187人の内訳は、殺人124人、同未遂1人、傷害致死34人、傷害28人。(434頁)

 そして資料では各個別の事件の発生日時、場所、犯人氏名、被害者氏名、罪名、犯罪事項をまとめています。 犯罪事項には「日本刀を以て殺害す」 「竹槍、鳶口及び棒を以て乱打し日本刀にて斬付け又は足蹴して死に致す」 「針金にて後手に縛し竹の棒、鳶口にて殺害す」 「軍隊が被害者を保護の為め同行途中殺害す」 「群衆とともに石塊を投げ付けて殺害す」 「巡査が被害者を保護中駐在所より連出して殺害す」 「被害者が電報配達の為め鈴木伝次郎方へ行きたるを誤認し傷害死を致す」などと記されています。(434~438頁)

 自警団らは朝鮮人だけでなく日本人も多数殺したことが分かります。 その内容からは、やはり「虐殺」と言わざるを得ないでしょう。 虐殺された人数は、立件されたものだけで58人です。

【拙稿参照】

水野・文『在日朝鮮人』(19)―関東大震災・吉野作造 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/09/04/8169265

水野・文『在日朝鮮人』(13)―関東大震災への疑問 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/07/19/8134282

関東大震災時の「在日朝鮮人虐殺者」の数 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2006/06/09/398058

関東大震災の朝鮮人虐殺  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/08/26/8163009