コロナ抑制には「戦時体制」が一番か?2020/05/03

 5月2日付の『毎日新聞』の「経済観測」欄はベトナムがコロナ抑制政策に成功している事例の紹介で、ちょっと興味深いものでした。 引用してみます。

https://mainichi.jp/articles/20200502/ddm/008/070/092000c

感染爆発抑えたベトナム=ベトナム簿記普及推進協議会理事長・大武健一郎

先日、日本から帰国したベトナム人留学生2人が新型コロナウイルスに感染していて隔離されたと報じられたが、ベトナムではコロナウイルスによる死者はまだ出ていない。

ベトナム政府は中国・武漢でのコロナウイルス流行を知り、今年1月から幹部の海外渡航を禁じた。 旧正月明けの2月3日から学校を休校とし、患者が発生した北部のソンロイ村を3月3日までロックダウン(封鎖)した。

3月には感染者と濃厚接触者にスマートフォンのアプリ導入を義務づけ、指定場所から30メートル以上移動すると当局が注意するほか、感染者の居場所が国民に分かるよう公開した。 しかも、国民が感染した可能性のある人を当局に通報するしくみもとり入れた。 市や村を越えてバスで移動する際には、名前や住所、電話番号の登録を義務づけるなど国内の移動規制も徹底的にやっている。 この結果、4月28日時点の感染者は計270人で、日本からの帰国者2人を除けば最近は新規感染者は出ていない。

ベトナムから来日した学生が言った。 「ベトナムは今もいわば戦時体制のような状況が続き、共産党一党独裁だから、政府の政策を国民は厳守するしかない。 コロナウイルス禍の時代には適しているが、日本での生活に慣れた我々はプライバシーがないベトナム社会は好きではない。 日本の緊急事態宣言はほとんど強制力はないが、これで感染爆発を抑えられるなら、日本人がルールをよく守るからで、今の日本の方が好きだ」

確かにコロナウイルス禍は戦争のようなものだ。日本でも戦時下の体制が求められているのかもしれない。 しかし、平和に戻った時に戦時下の体制は好ましいものではないことは確認しておく必要がある。

 ここで関心を持ったのは、ベトナムが「戦時体制」であり、国民は政府の言うことを「厳守するしかない」ということで、それがコロナ抑制の成功につながっているというのです。

 ここで韓国の話をしますと、韓国も北朝鮮との戦争が法的には終了しておらず、「戦時体制」が今も続いています。 韓国国民は「徴兵制」「住民登録番号制度」など国家から権力行使されることを容認しており、これがコロナ抑制の成功の大きな要因になったということです。 これはFNNが報道しており、拙ブログでも取り上げました。

日韓-お国柄の違いでコロナ対策も違う  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2020/04/17/9236209

 コロナのような国家の非常事態に際しては、「戦時体制」のように国民の「自由」や「人権」などを無視して対応策を取るのが最善であるということになるのかも知れません。 そういえばコロナ抑制に成功している台湾も、中国からの侵攻に備えて「戦時体制」を続けてきています。 日本では安倍首相のコロナ対策が不十分だとして韓国などを例に挙げて政権批判する人が多いようですが、「戦時体制」を求めているのでしょうか。

安倍首相に韓国に学ぶ度量はあるか https://www.newsweekjapan.jp/kimura/2020/04/post-77.php

 ところで上記の毎日新聞の記事では、ベトナム人留学生が「日本での生活に慣れた我々はプライバシーがないベトナム社会は好きではない。日本の緊急事態宣言はほとんど強制力はないが、これで感染爆発を抑えられるなら、日本人がルールをよく守るからで、今の日本の方が好きだ」と発言しています。 これは成程と考えさせられるものです。 これでは安倍政権の今のコロナ対策は決して悪くないということになります。

 コロナ禍は前代未聞の事態ですから、どんな政策が正解なのかは誰も分かりません。 それは後日に検証すべき課題です。 今は現行法律内で、やるべきことをやるしかないでしょう。 現行法律で抑制できないなら多大な犠牲者が出たとしても今のところ仕方ないと諦めねばならず、事態が沈静化してから「戦時体制」を含めた法律を議論すべきでしょう。

 ところで権力の自粛圧力に屈しないで果敢に開店を続けるパチンコ屋さんは、反権力闘争の実践者ですね。 ふだん「反権力」を呼号する左翼・革新系の方からこういうパチンコ屋さんを応援する動きがあってもいいと思うのですが、見当たりませんねえ。