マッコリ(タッペギ)とシッケ2020/12/28

 朝鮮伝統酒のマッコリの話です。 前回の話のように、植民地時代の日本人女性は仲良くなった朝鮮人から「朝鮮漬け」の作り方を習いましたが、マッコリの作り方は学んでいませんねえ。 やはり不法だという認識があったためでしょうか。 なおマッコリは在日朝鮮人社会では「タッペギ」と呼ばれていました。

 タッペギの「タッ」は「탁(濁る)」だから濁酒(どぶろく)そのものを指す、 マッコリの「マッ」は「맑다(澄む)」という意味、「コリ」は「거르다(濾す)」の意味で、濁酒を濾して上澄みだけを取ったものが「マッコリ」だと解説する人がいました。 だからタッペギは安物で、マッコリはちょっと高級というのでした。

 説得力がありますが、そんな解説をした本がなく、また韓国文化に詳しい人に聞いても、そんなことは初めて聞いたと言っておられました。

 マッコリ(タッペギ)については、下記の拙稿を読んでいただければ幸い。

タッペギ(マッコリ)の思い出  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/03/04/6359741

伊地知紀子『消されたマッコリ』(1) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/12/08/7940574

伊地知紀子『消されたマッコリ』(2) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/12/13/7947408

伊地知紀子『消されたマッコリ』(3) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/12/17/7951241

伊地知紀子『消されたマッコリ』(4) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/12/21/7956212

伊地知紀子『消されたマッコリ』(5) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/12/26/7961704

伊地知紀子『消されたマッコリ』(6) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/12/29/7964563

 次は酒ではなく甘酒の話です。 1970年代に在日一世のおばあさんから、「近所の日本人に、うちらの国ではこんな甘酒を飲むといってシッケ(食醯、식혜)を出してあげたら、ちょっと匂いを嗅いで目の前で捨てられた。日本人はうちらの国の食べ物を絶対に食べないのだから」という話を聞きました。

 かつての在日と日本人との関係を象徴するような話です。 自分が作ったものを目の前で捨てられるという体験話は胸を締め付けられるもので、今なお私の記憶に残っています。

 シッケは今の韓国で缶入りのものが売られています。 冷やしたものは夏にちょうどいい飲み物です。 韓流ファンの女性たちはよく飲んでいるようです。

コメント

_ 海苔訓六 ― 2022/07/19 13:15

韓国観光した際に現地ガイドしてくださった日本語の出来る朝鮮人大学生の家(アパート)にお邪魔したとき、シッケを固めた棒状の飴を出してくれたのでいただきました。百点満点(백점 만점)という名前のキャンディで、韓国では一番売れている飴だと説明してくださいました。飴はベタベタくっつくのでくっつく→合格という縁起を担いで朝鮮人は試験前に飴を食べたり試験会場で飴をなめたりするのだと話してくれました。百点満点という商品名もそこに由来するそうです。日本だと試験を受ける時は勝利の語呂合わせで『カツ丼』とか『キットカット』みたいなイメージがあるので、こういう感覚は日本人と朝鮮人でずいぶん違うのだと感じさせられました。
日本のキャンディとかと違って変な甘味料や香料の味を感じさせない素朴な飴で、素直に『旨いです』と感想を伝えたら二本お土産にくださったので帰国してから知人にプレゼントしたら喜んでくれました。

_ 海苔訓六 ― 2022/07/19 18:41

蛇足ですが『緑豆の花』という韓国大河ドラマを見たら主人公のユン・シユンさんが科挙の試験を受けるときに婚約者から『合格祈願もかねて飴をもっていってください』と飴をわたすシーンが出てきました。
現代韓国は学歴社会なので試験を受ける時に飴をなめるのは建国後の風習なのかと漠然と思っていたのですが、この時代からそういう習俗があったのかな?と思いました。全琫準の東学党乱が背景の大河ドラマなんですけど、もちろん時代考証がどの程度精密なのかも分かりませんが、印象的なシーンでした。

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