『労働新聞』の論説―朝鮮戦争70周年(5)2023/08/12

https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/08/08/9608146 の続きです。

 1950年から始まり1953年まで続いた朝鮮戦争。 今回の論説もそうですが、北朝鮮の朝鮮戦争の説明には中国人民解放軍に全く言及しません。 50年前の1970年代に朝鮮総連の方とこの戦争について話したことがありました。 その時も彼は中国人民解放軍に触れようとしなかったことを思い出します。 彼が“もう少しのところで祖国が統一されようとした時にアメリカが邪魔をした”と言うので、私は“そうであるならばその後国連軍は鴨緑江まで進軍し、朝鮮は統一目前だったのに中国が介入して統一を邪魔したと言えるのではないか”と疑問を呈したことがあります。 それを契機に議論をしたのですが、朝鮮総連では朝鮮戦争における中国人民軍の果たした役割をほとんど無視していることを知りました。

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は滅亡されかかった時に中国人民解放軍に助けられて国を守ることができたというのが歴史的事実と考えていた私には、中国人民解放軍を全く無視する朝鮮総連の説明に大きな違和感を持ちました。 その後、この説明は祖国の北朝鮮自体がやっていることを知りました。 国際プロレタリアートの連帯として中国人民解放軍が参加したのですから何も隠す必要はないのにと思ったのですが、北朝鮮・朝鮮総連は外国勢力の助けなしに自力で戦ったと言うばかりです。

 主体思想というイデオロギーのために歴史事実を歪曲する典型例と判断できました。 北朝鮮が語る「歴史」は事実の積み重ねではなく、単にプロパガンダであり、検証できるものではないと知ったのです。 北朝鮮の「歴史」はカルト宗教の経典と変わらない、そう考えながら北朝鮮の「歴史」を読むものだ、と今でも考えています。

 なお日本でも昔になりますが、戦時中に大本営発表の連戦連勝を信じ、また歴史でも天孫降臨・神武東遷神話を信じていたのですから、偉そうなことは言えません。

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7・27が刻みつける真理は、二番目に全人民の反帝階級意識が透徹してこそ、勝利者になることができるということである。

革命戦争は、階級的仇敵たちとの誰が誰と勝負するかの闘いである。階級的仇敵たちに対する非妥協的な闘争精神で、頭の上から足の先まで武装できないならば、熾烈な戦争で勝利できない。

反帝階級聖戦で、革命的人民が守らねばならない思想精神は、帝国主義者たちと階級的仇敵たちの本性は絶対に変わらず、仇敵たちとのひたすら堅固で、最後まで戦って勝たねばならないという透徹した覚悟である。山犬は血を吸ってこそ生きることができるように、帝国主義者たちや階級的仇敵たちは勤労人民の血と汗だけで生存できる。侵略と略奪、野獣性を体質化した仇敵たちに対する幻想は即ち死である。

我が党は新祖国建設の初めの時から、永遠に変わることのできないアメリカ帝国主義の本性と悪だくみを見抜き、それに徹底して備えてきたので、敵たちの不意の侵攻や断末魔あがきも一つずつ粉砕して勝利を争取することができ、全民族が完全に絶滅されるところだった大惨事も防ぐことができた。

透徹した反帝階級意識と両立できない思想傾向がまさに敵に対する恐怖である。敵に対する幻想が仇敵たちの本性に対する無知の表現であるなら、恐怖は敵の《強大性》に対する敗北意識の発現である。戦略的な一時的後退時期に、我が人民と軍隊は少しの悲観や動揺もなく、苦難の千里の道をかき分け、偉大な首領様の懐を訪れて、アメリカ帝国主義のしつこい原子爆弾の恐喝にも肯ぜず、大衆的英雄主義と犠牲性を発揮して、ついに戦勝の祝砲を打ち上げることができた。

火薬を濡らさないようにしてこそ滅敵の威力を発揮する。苛烈な祖国解放戦争と今日までの反米対決が見せてくれたように、階級意識、主敵観が揺るがなかった時に初めて争取した勝利の伝統を屈せずに粘り強く続けていくことができる。

どんな大敵も圧勝できる自衛力の上に永遠の平和がある。これは祖国解放戦争と以降の70年の朝米対決史が刻む、もう一つの真理である。

強者の前では卑屈になり、弱者の前では暴虐になることが帝国主義の山犬たちの有様だ。力を万能とみなす帝国主義者たちは、ひたすら力にだけで屈服させることができ、その力は世界最高のものでなければならない。万一、70余年前に我々の軍力が今日のように強大であったなら、アメリカ帝国主義は敢えて戦争を起こす念頭も出てこなかったのだ。朝鮮半島で戦争の危険を完全に除去しようとするならば、絶対的な国家安全担保力を備えなければならない。

軍力強化で終着点というのは、あってはならない。担保は直ぐに退歩を生み、遅れをとった国と人民は帝国主義の篭絡物となる。どんな対価を払っても軍事的強勢は止まることなくさらに早い速度で維持拡大せねばならない。これは残酷な戦乱で渦巻いた20世紀と今日の21世紀の血の絶叫であり、国と民族、後孫万代の永遠な平和繁栄のために万難に打ち勝って闘争する我が人民の高々とした自覚である。

真理は認識することで止まってはいけない。それが我々の闘争と生活の一瞬一瞬に具現されるものが重要であり、ここに光輝の未来を前倒しにする早道がある。高貴な7・27の真理が新世代の勤労者たちと人民軍将兵たちのそれぞれの心臓に鼓動を打つことによって、勝利は永遠に朝鮮のものである。

今日、敬愛する金正恩同志におかれては、我が国家と人民をより大きな反米大勝と全面的復興に力強く嚮導しておられる。世紀をまたぐアメリカの対朝鮮圧殺政策を総破産させ、この地の上に世界が見上げる天下第一の強国の歴史、民族自主、平和繁栄の歴史が終わりなく流れるようにすることが、偉大な党中央の確固不動の意志である。

敬愛する金正恩同志の領導に従って、偉大な戦勝の伝統をひるまず続けていく我が人民は、強国建設の歴史的大業実現で世界を鳴り響かせる伝説的神話と変革を間断なく創造していくのである。  (終わり)

『労働新聞』の論説―朝鮮戦争70周年(1) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/07/27/9605137

『労働新聞』の論説―朝鮮戦争70周年(2) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/07/31/9606151

『労働新聞』の論説―朝鮮戦争70周年(3) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/08/04/9607167

『労働新聞』の論説―朝鮮戦争70周年(4) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/08/08/9608146

コメント

_ 竹並 ― 2023/08/14 06:27

これは知りませんでした…
>【今回の論説もそうですが、北朝鮮の朝鮮戦争の説明には中国人民解放軍に全く言及しません。 50年前の1970年代に朝鮮総連の方とこの戦争について話したことがありました。 その時も彼は中国人民解放軍に触れようとしなかったことを思い出します。 ・・・・・ 主体思想というイデオロギーのために歴史事実を歪曲する典型例と判断できました。】

2、3年前でしたか、郵便学者の内藤陽介氏が、チュチェ(=主体)思想を説明したyoutube動画の中で「主体、チュチェの反対の概念はスデ、事大です」と対立概念として説明していたので、「そういうイデオロギーなら(「事大」の相手であった国…)中国の義勇軍=無視もあり得るな」とは思いますが、1970年代からというのは意外というか、さすがに早すぎるんぢゃないか(=忘恩)という日本的な感性が脳裏をよぎりますね。

_ 濱田 ― 2023/08/14 08:28

“中国人民解放軍を全く無視する朝鮮総連の説明に大きな違和感を持ちました。 その後、この説明は祖国の北朝鮮自体がやっていることを知りました。”
こちらのコメントに少々違和感を感じました。
私自身、朝鮮総連の方や、まして北朝鮮国民の方に知り合いなどおりませんが、妻が中国人で、亡くなった岳父は元人民解放軍の軍人でした。
義父との話しで、軍隊時代の事もチラホラ聞いており、その中で朝鮮人民軍は朝鮮戦争時の中国義勇軍に感謝しており、中国軍歌の朝鮮語版を今でも北朝鮮では歌っているとの事。もちろん義父は中国人なので、一方の話しだけを鵜呑みにはできませんが、実際にYouTubeでモランボン楽団の中国人民志願軍軍歌(鴨緑江を越えて中国の勇ましい子弟が米国を倒すために朝鮮を支援に向かう、と言った内容)の朝鮮語版コンサートや、朝鮮人民軍の合唱団による、中国人民解放軍軍歌、歌唱祖国、一二三歌(何も中国の古い軍歌や第二の国歌的な歌)の朝鮮語版を聞くと、あながちあり得ない話しでは無いかと思います。従い中国人民解放軍を全く無視、はないのでは?と思った次第。
余談ですが、義父は中国四川軍区に属しており、天安門事件の時は北京軍区の司令が学生の鎮圧を拒否して更迭され、四川軍区に出動待機命令が出たとの事。あまり関係無いのでここでは割愛。

_ 辻本 ― 2023/08/14 11:06

 7月27日の朝鮮戦争休戦協定締結日を記念する「労働新聞」の論説を訳しましたが、読めば分かりますように中国は全く出てきません。
 朝鮮人民は偉大な首領金日成にの領導によって、自らの力で祖国解放戦争に勝利したと言うのみです。
 このごろの朝鮮総連は知りませんが、1970年代の総連の人たちは中国になかなか言及せず、こちらが朝鮮戦争における中国人民解放軍の決定的な役割を言うと、嫌な顔をして直ぐに別の話題にもって行こうとしていたという記憶があります。

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