「朝鮮部落」―金賛汀さんの体験(2) ― 2025/10/27
https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/10/21/9811055 の続きです。
朝鮮人たちは高度経済成長の恩恵を受けて経済的に余裕ができ、家を購入したりして部落外に出て行こうとする動きが現れてきます。 金賛汀さんは次のようなデータを出しています。
日本人が「朝鮮部落」を敬遠し、近辺地域の地価が他に比較して安価であったことから、高度経済成長で収入を確保できた在日の人々が土地を購入して、持ち家を建設する事例も多くなった。 1960年代、70年代の在日の住宅事情についての調査資料が存在しないので、当時の状況は不明であるが、1983年、神奈川県が在日朝鮮・韓国人についての調査を実施した結果によると、表8のようになる。
表8 神奈川県在住韓国・朝鮮人の住宅所有統計
外国人 県下一般
総数 100 100
持ち家 57.1 55.7
借家 41.6 43.8
うち公営、公団・公社 4.1 7.1
うち民営(含アパート) 34.7 30.5
うち給与住宅 2.8 6.1
その他・不明 1.3 0.5
(%)
この統計から判明することは在日の人々の持ち家比率が日本人よりわずかであるが高く、反対に公営・公団などの住居率が低いことである。 それはかつて「国籍条項」を盾に在日の入居が拒まれていた影響であろう。 戦前、1934年ごろの東京都での在日の家屋所有について報告書は「目下在京朝鮮人はその数4万(実数3万9552人)を数へるも、自分の家作(バラックを除く)に住むものは十指に足りぬ状態で‥‥」と記述しているのと比較すると調査時の1985年には持ち家比率が57.1%になっており、隔世の感がある。 (以上、175~176頁)
金さんは神奈川県のデータを出して、在日の持ち家の割合が日本人よりも高くなった事実を明らかにしています。 これはおそらく全国的に見られた傾向と考えられます。
ぐっと年代を下げたバブル経済およびそれ以降のことですが、家を借りようとすると「外国人お断り」で苦労した外国人が〝だったら購入しよう”となる場合が多いという話を聞いたことがあります。 不動産賃貸の外国人差別は今も続いているようです。 かつての在日の苦労が再現されているようですね。
多くの「朝鮮部落」の消滅は在日社会にさまざまな影響をもたらした。 まず、朝鮮民族意識のありかたの変化である。 在日が集団で生活する場があった時代、その地域の人々は朝鮮民衆の生活、文化的風習を色濃く保って生活していたが、日本社会に分散して生活するにつれ、民族文化、生活感覚を温存できる条件が急速に失われていき、そして同化の速度を速めた。 また、時を同じくして在日社会もかつてのように皆一様に貧しかった時代から、富めるものと貧しいものに階級分化が急速に進んだ。 経済成長の波に乗り、1960年ごろから事業を起こして成功する人々も増えた。 戦後、在日の人々の主要な職業は「パチンコ屋」「土方」「ホルモン焼き屋」「屑屋」であったが、「パチンコ屋」は電子科学分野の目覚ましい発展を背景に機械化と店舗の大規模化を成し遂げ、「土方」の親方は公共土木事業の増大で土木建築会社に成長し、「ホルモン焼き屋」は大型の焼肉料理店に生まれ変わり、「屑屋」は産業廃棄物処理業者へと変貌した。 (同上 176頁)
1983年3月の神奈川県の調査では在日の人々で事業を営む人は調査対象の29%に達し、その事業の年間売上額が5億円以上の事業所が6%にもなった。 住む住宅が確保され、就労の機会もあり、事業で成功する人が増える状況のもと、彼らの日本定住の意思は確固たるものになり、同化の進行による民族意識の希薄化がそれに拍車をかけた。 (同上 176頁)
金さんの見るところでは、〝在日韓国・朝鮮人は「朝鮮部落」という強固なコミュニティが解体し、自分たちが従事してきて得意分野となっていた「パチンコ屋」「土方」「ホルモン焼き屋」「屑屋」が発展して定着し、日本社会に貢献する存在となった”ということですね。
在日は日本への同化がさらに進んでいって、今はその最終段階に差し掛かっているのです。 在日の歴史の終着点は、〝日本社会に同化吸収されて、その一員となる”となりましょう。 これを日本側から見れば、〝わが日本文化は在日朝鮮人の文化を取り入れて、文化の幅が広く深くなった”ということです。 歴史を振り返ってみると、古代にあっては朝鮮半島からの渡来人が日本で活躍し、中世にあっては同じく朝鮮半島から陶磁器の技術と文化が伝わりました。 そして彼らが有していた文化は日本文化の一部となることによって、日本の文化がより深みと広さを持つようになっていったのです。
戦後80年の歴史(戦前を含めると100年以上の歴史)を歩んできた在日たちも、近い将来に〝日本の一部となる”という最終地点に行くものと考えます。 逆に言えば、在日は100年かかって日本に吸収されて同化し、同時に今度は日本文化が在日文化をも柔軟に取り込んで変化していくということです。 それによって日本民族は新たな民族へと変わっていくのです。
そして現代の外国人問題に引きつけて言うならば、彼らもまたこれまでの100年単位の在日の歴史と同じ軌跡をたどって日本人の一部になるだろうし、またそうなっていくことを願っています。 (終わり)
戦前の朝鮮部落の状況 https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/10/01/9806622
かつて日本人は在日朝鮮人をどう見ていたか(1) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/10/08/9808117
かつて日本人は在日朝鮮人をどう見ていたか(2) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/10/15/9809571
「朝鮮部落」―金賛汀さんの体験(1) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/10/21/9811055
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水野・文『在日朝鮮人』(21)―同化 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/09/23/8197450
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「差別・同化政策」考 http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daigojuuyondai
在日朝鮮人は外国人である http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daiyonjuudai
(続)在日朝鮮人は外国人である http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daiyonjuuichidai
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『ハンギョレ』中村一成氏への違和感(1) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2022/07/30/9513291
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在日韓国・朝鮮人自然消滅論(1) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2024/11/26/9734747
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