朝鮮人の子供たちは同化されたのか(1) ― 2026/01/02
戦前に来日した朝鮮の子供たちの教育について、日本当局は当初は方針を特に定めていませんでしたが、1930年代に入ってからようやく対策を打ち出しました。 それは朝鮮人自身がそれまで自分たち子弟のために行なっていた教育を否定して、日本の学校に誘導することでした。 それで子どもたちの多くは昼間の学校に通ったのですが、一方では当時の在日朝鮮人家庭の貧窮状況により各地に設けられていた夜間小学校に行く子供も少なからずいました。
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しかしそこは日本の学校であり、朝鮮人の民族教育をする場ではありません。 朝鮮人の子供たちには日本語を覚えさせ、日本社会に早く馴染ませようと、いわゆる同化教育(当時は皇民化教育)を施すことになります。
(1936年以降)すべての朝鮮人を管理する目的でつくられた協和会の活動が活発になると、公立学校に入学させる方向で皇国臣民化教育が徹底されるようになり、朝鮮語はまったく教えられなくなり、皇国少年がつくり上げられていく。 1936年の協和会体制強化以降に育った子供たちは、この強い日本人化=皇民化教育の影響を受けることとなったのである。 (樋口雄一『日本の朝鮮・韓国人』同成社2002年6月 83頁)
このような同化教育がどういうものであったか。 それは朝鮮人の民族性を否定するものであったため、次のような状況になっていたとされています。
1930年代半ばに朝鮮人の自主的な教育機関が閉鎖された後、朝鮮人の子どもたちは日本の学校に通うことになった。 当局は学校教育を通じて日本への同化、日本精神の注入を図るために、それまでの放任姿勢を改め朝鮮人の子どもを積極的に学校に受け入れて「協和教育」「皇民化教育」を施す方針に転換した。 しかし、朝鮮人の子どもたちを待ち受けていたのは、学校での差別的な扱いであり、自己否定を強要される教育内容であった。
1938年に下関の学校が作成した資料は、全校児童の約20%を占める朝鮮人児童の性格を「無気力、不熱心、勉学心乏し、積極的気風を欠く」「剛情強いところがあるかと思うと軽率、雷同的」「不道徳行為を平気でやる」「虚言を何とも思わず、羞恥心に乏しい」など、あらゆる否定的言辞で貶めた上で、それを矯正するには「日本人意識日本精神」を持たせ、「日本人の真の力を敬仰景慕せしめ日本児童たることを至高とし感謝する情念を養う」ことが必要であるとしている。
このような教育方針のもと、子どもたちは朝鮮人であることを徹底的に否定され、自らもそれを否定しなければならない状況に置かれた。 (以上、水野直樹・文京洙『在日朝鮮人―歴史と現在』岩波新書 2015年1月 63~64頁)
これは実際の学校現場では、同化教育がうまくいっていなかったことを示しています。 このことは日本の司法当局側から次のように報告されており、それを裏付けています。
日本の官憲は朝鮮人の子どもたちの日本社会への同化を期待したが、かれらの民族への愛着を抹殺することはできなかったようである。 例えば1939年に福岡地方裁判所と検事局が主催した、県下朝鮮人に関係している日本人の座談会で、ある日本人はつぎのように報告している。
「私が一つ意外に感じた事例がありますので参考までに申し上げます。 私は従来成人は同化ということは困難だろうということは考えておりました。 しかし子供はそうではないだろうと思っておりました。 ところがある機会に尋常6年か5年の子供ですが、男だったか女だったかを記憶しておりませんが、内地がよいか朝鮮がよいか尋ねたところ、その子供が、どうしても朝鮮がいい、卒業したら朝鮮に帰るのだ、という答えをきいて、実に意外の感に打たれたのであります。
けれども子供等はほとんどこちらで育っておって、朝鮮にはお正月に二度か三度親に連れられて帰った程度でしょうが、それにも拘わらずどうしても内地はいやである、朝鮮に帰りたいということをいう。 こういうことを聞きました時、私どもは従来、今の成人がなくなってしまって、今の子供が成人して次の時代になったら、内地に同化できるのじゃないかと思っておったことを自ら危ぶまねばならぬという感じを受けたのであります。 これは従来ひそかに抱いていた危惧の念をいっそう深くした次第であります」(司法調査課『福岡県下在住朝鮮人の動向に就いて』) (以上 姜在彦・金東勲『在日韓国・朝鮮人―歴史と展望』労働経済社 1989年9月 71~72頁より再引)
(続く)
【拙稿参照】
戦前の夜間小学校―朝鮮人子弟の教育(1) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/11/09/9815943
戦前の夜間小学校―朝鮮人子弟の教育(2) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2025/11/15/9817244
第64題 朝鮮人学校閉鎖令 http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/dairokujuuyondai
朝鮮人学校閉鎖令 https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2006/12/18/1036201
在日の低学力について(1) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/04/28/9371638
在日の低学力について(2) https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/05/05/9374169
親の靴職人を継いだ在日子弟―『抗路9』座談会 https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2022/02/24/9466872
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