本名を取り戻した在日のおばあさん2019/03/23

 ちょっと以前ですが、2019年3月7日付けの毎日新聞に「関西夜間中学運動50年史、本に 学び、取り戻した人生 苦難・喜び、60人手記」と題する記事がありました。   https://mainichi.jp/articles/20190307/ddf/001/040/002000c

 この記事の中で、本名を取り戻したという在日朝鮮人のおばあさんの話があります。

記録集には壮絶な手記も寄せられた。「本名を名のりたい。本当の自分に戻りたい」。 韓国・済州島出身で、東大阪市立長栄中学夜間学級卒業生の文在良さん(89)は、70代で在学中に入国管理局に出頭、50年以上使った別人の名を返上し、本名を取り戻した体験を寄せた。 3歳で来日、戦後帰国したが再び日本を目指して密航船に乗り、生きるため、別人の女性の外国人登録証を買った。

仕事と育児に追われる日々を過ごし、「漢字が書けるようになりたい」と夜間中学生に。 自身のルーツを学ぶうち「死ぬ時は本名で」との思いが募った。 「他人の名前で生きていることが、いつも心に引っかかっていた」と文さん。 強制送還も覚悟で自首し、3ヶ月の取調べを経て本名を手にした。 2013年に83歳で高校も卒業。「夜間中学がなかったら、人生を取り戻すことはできなかった」と振り返る。

 この記事で「本名を取り戻す」とありますが、それは通名(日本名)を本名に切り替えることではありません。 密航し他人の外国人登録を不法に入手して使ってきた名前を、本来の自分の名前に変えたことなのです。 そしてそれは、当局の取り調べと処分を経て、新たに合法的な在留資格を得たということも意味します。

 このような在日は結構多いものです。 有名人では今はお亡くなりになりましたが、尹学準さん。 彼も日本に密航して「李継栄」という名の外国人登録証を購入し生活してきましたが、小学生の子供が親である自分の名前に疑問を抱いたのをきっかけに入管に出頭し、取調べの末、合法的な在留資格となり、本来の名前である「尹学準」を使うようになりました。  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/12/03/7933877 

 しかし本名を取り戻せていない有名人もいます。 金時鐘さんです。 彼も日本に密航して「林大造」名の外国人登録を入手し、この名前で生きて来られました。 そしてこの「林大造」名で、今度は韓国の戸籍(今は家族関係登録簿)を作られました。 ですから今は本名が「林大造」で、「金時鐘」はペンネームということになっています。

 彼は親から「金時鐘」という名前をもらい、韓国ではこの名で生活し学校に通われました。 しかし日本密航で不法に入手した「林大造」という名前がそのまま日本でも韓国でも本名(法律名)となってしまったのです。 在留資格も他人である「林大造」を引き継いでいるものと思われます。

 金時鐘さんはこのような自分史を語っているのですが、入国管理局や警察に出頭することもなく、従って法的に極めて疑問な形のまま生きてこられました。 これからもこの法的問題を解決することなく残る余生を過ごされるものと思われます。

【拙稿参照】

毎日の余録に出た金時鐘さん    http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/08/27/8950717

本名は「金時鐘」か「林大造」か  http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/08/23/8948031

金時鐘『朝鮮と日本に生きる』への疑問 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/07/28/7718112

金時鐘さんの法的身分(続)     http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/08/13/7732281

金時鐘さんの法的身分(続々)   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/08/26/7750143

金時鐘さんの法的身分(4)    http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/08/31/7762951

金時鐘さんの出生地        http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/07/05/7700647

金時鐘『「在日」を生きる』への疑問 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/03/01/8796038

韓国密航者の手記―尹学準     http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/12/03/7933877

在日の密航者の法的地位      http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/06/23/6874269

コメント

_ 河太郎 ― 2019/03/23 12:12

<毎日の余録に出た金時鐘さんhttp://tsujimoto.asablo.jp/blog/2018/08/27/8950717>
に下記の箇所があります。

辻本氏> これを「強制」と否定的に表現することは、事実を歪曲するものと言っていいと考えます。

辻本氏>そんな時代でしたから「母国語を奪われた朝鮮人」というのは、当時としてはあり得ないことです。

小生、辻本氏の主張に全く同感です。

ところが、先日 ≪「朝鮮半島の今を知る」(22) 伊豆見元・東京国際大学教授 2019.3.12≫https://www.youtube.com/watch?v=Fhv66hNtorcで伊豆見教授は、シレッと「ことば、名前を奪われた」言っていました。

何だ,この御仁もプロパガンダ拡散者だな、と改めて思い、興醒めしました。

テレビでは中立的姿勢のふりして学者コメントをしていましたが、その根っこは自虐史観の朝鮮御用学者でした。

「ことばを奪った」「名前を奪った」は完全なプロパガンダだ、と関心あれば素人でも認識しているご時世なのに、ポロッと本音を漏らしたのは、地は隠せないということでしょう。

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