「嫌韓」は植民地の歴史を引きずる―福島みのり2021/11/11

 毎日新聞の11月5、6日付けに「韓流ブームと『嫌韓』」と題する記事があります。 金志尚記者が常葉大学の福島みのり准教授からの話を引用しながら、「韓流」と「嫌韓」を考察しています。  https://mainichi.jp/articles/20211105/ddm/013/040/014000c  https://mainichi.jp/articles/20211106/ddm/013/040/026000c   有料記事ですから、関心のある方は図書館で閲覧してください。

 読んでみて、植民地支配の歴史に関する福島准教授の意見に違和感をもつ部分がありました。

韓国に留学したいと言うと、お父さんやおじいちゃんに反対された――そんな話を学生からよく聞くというのだ。

年配の男性はやはり、過去の日本による植民地支配に基づき、韓国を見下す意識を内面化している部分があると思います。 一方、韓国は(自国経済が大打撃を受けた1990年代後半の)アジア通貨危機を経て特に00年代以降、文化産業やIT産業の育成を通じて国力を高めていきました。 結果として今のような韓流人気にもつながっています。 国際的な地位が上昇した韓国との間である種の“逆転現象”が起きる中で、気に入らないというか、認めたくないという思いを、特に年配の男性は抱いているのではないかと思います。

 福島准教授は「年配の男性はやはり、過去の日本による植民地支配に基づき、韓国を見下す意識を内面化している」というのに、ちょっとビックリ。 75年以上前の植民地時代朝鮮を記憶している年配の方は相当に高齢ですから、ほんのわずかでしょう。 そして日本が植民地支配したのは朝鮮でだけでなく台湾、南洋諸島、満州等々多数ありますが、そのうちの朝鮮だけを取り上げて「植民地支配に基づき、見下す意識」があるとするのは疑問です。

 なお准教授が言うように、ここ2.30年の間に韓国が発展したことを認めたくない年配の男性が多いのは事実ですね。 ネットのコメント投稿でも「韓国と国交断絶しても日本は困らない」なんていうのが見かけられますが、昔の弱小国時代の韓国を未だ忘れられないようです。 いつまでも弱小国でいてほしいという願望が根強い、としか言いようがありませんね。 しかしだからと言って、子や孫の韓国留学に反対するものだろうか?という疑問が湧きます。

 韓国留学に反対するのは、歴史の勉強不足やかつての日韓関係の記憶からではなく、今の韓国での反日運動があるからでしょう。 旭日旗や「日本海」名称への反対、竹島の帰属問題、ユニクロやビール、自動車等の日本製品の不買運動等々が連日のように報道され、また韓国旅行をしていた若い日本女性に向かって「チョッパリ(日本人に対する蔑称)」と叫びながら暴行した韓国人男性も報道されました。 このように韓国では反日運動が盛んだというニュースがしょっちゅう流れてきていますから、子や孫が留学するのに不安となるのは理解できると思うのですが‥‥。

K―POPをはじめ韓国のポップカルチャーは若者らの圧倒的な支持を集めている。だが、その「反動」が、嫌韓的な空気を生むこともある。

若い人たちは、自分は過去の歴史とは無関係だと思っています。 だからアイドルを通じて突然そういうものに遭遇すると、ショックを受けてしまうのです。 これには、『政治から距離を置くべきだ』という日本社会の風潮と、日本が朝鮮半島を植民地支配していた歴史をきちんと学んでいないことも影響していると思います。

 この最後にある「『政治から距離を置くべきだ』という日本社会の風潮と、日本が朝鮮半島を植民地支配していた歴史をきちんと学んでいないことも影響している」という部分に、疑問を感じます。

 K-POPなどの韓国文化を楽しむのに、「政治から距離を置く」のは当然でしょう。 また「歴史を学ぶ」なんて、やりたい人がやればいいのであって、K-POPを見る人に押し付けるような物の言い方はいかがなものかと思います。

 どこの国でもそうだと思いますが、外国文化を楽しむ人すべてに政治や歴史の勉強を要求するのはいかがなものでしょうか。 政治・歴史に関心のある人も関心のない人も、外国文化は一緒に楽しむものだと思うのですがねえ。 

 ところで日本の嫌韓派の人たちは、韓国文化・韓国語には関心がありませんねえ。 彼らは韓国の政治・歴史に対して大きな関心を持っているのですが、かなり偏っている知識で、しかも相手方を「ウソの歴史だ!」などと批判・誹謗するだけです。 これは日本人が同じ日本人に向かって日本語で吼えて溜飲を下げているに過ぎず、仲間同士集まった酒席の与太話のレベルです。 韓国に関心があるのですから、最低限、韓国語ぐらいは勉強して、さらにはK-POPを楽しんでほしいですね。

【拙稿参照】

「歴史」を学ぶことの疑問  http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daijuurokudai