小松川事件(3)―李珍宇が育った環境 ― 2023/04/12
https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/04/08/9575512 の続きです。
小松川事件の李珍宇は、東京都江戸川区上篠崎にある朝鮮部落で5歳から暮らしました。 彼がどのような環境で育ったのか、そのおおよその様子が家庭裁判所の検察送致決定書にありましたので紹介します。
「小松川事件」検察官送致決定書
五、本少年の人間形成の過程について
1958年10月14日 東京家庭裁判所 裁判官 森口某‥‥ 家庭裁判所調査官 冨士森某作成の調査報告書並びに当審判廷における少年および保護者の各供述によれば
少年は昭和15年2月28日、東京都城東区亀戸において父母の間に三男三女中、次男第二子として出生した。 家庭は極度に貧しく、父は無学無教養である。 父は窃盗前科六犯を有する好酒家で、父の弟もまた前科九犯を有し、現に府中刑務所に服役中であり、祖父は賭博常習犯で大酒家であった。 祖父、父とも近所交際をしない偏屈者である。 母は唖者であって、母の兄と弟の二人が唖者であるという外、その家計は詳らかでない。
昭和20年3月9日、少年が五歳の時、戦災に因り焼け出され現住所に八畳、四畳半二間の粗末なバラックを建てて移転した。 その環境は小岩の繁華街を遠く離れて、通称鹿骨街道に面した農家の間に点在する一部落であって、戸数は27戸あり、そのうち四世帯は犯罪家庭であり、五世帯は生活扶助を受けており、そのほとんどが貧困家庭である。 少年はその社会環境を背景として成長したもので、少年の道義心養成の環境としては必ずしも良くなく、境遇も不幸であったと言うことができる。
60年以上前の裁判資料だからでしょうが、表現が「無学無教養」「好酒家」「大酒家」「偏屈者」「犯罪家庭」のようにかなり厳しいですね。 今だったら不適切表現!と大騒ぎになるでしょう。 ところでこの家裁の報告によれば、李の父や祖父らが大酒飲みで犯罪性向があるなど、李の家庭はかなりの困難を抱えていたことが分かります。 おそらくDV(家庭内暴力)も激しかったと思うのですが、当時はDVが問題にならなかった時代だったからでしょうか、記述がありません。 私は子供の時に抱いたイメージとして、朝鮮人の家といえばDVを思い出すのですが‥‥。
そして李が暮らしていた朝鮮部落は27戸、そのほとんどが「貧困家庭」で、そのうち「犯罪家庭」が4戸、生活保護世帯が5戸とあります。 ここの朝鮮部落は当時の全国に散在していた朝鮮部落と似たり寄ったりの様相だったと思われます。 (下記参照)
李珍宇の家庭や社会環境は、当時の朝鮮人としては決して特異なものではなかったということです。 従って在日朝鮮人は劣悪な社会環境・家庭環境のなかで、多くは正道を歩んだのですが、一部の者が悪の道に走ったと言えます。 そして在日の場合は、悪の道に走った者の割合が昔は高かったと言えるのですが、その後生活が安定するにつれてその割合が低下し、目立たなくなって今に至っているのです。
現在は逆に、一部の日本人によるヘイトスピーチという悪辣言動が目立ちますね。 また放火などの犯罪に走る日本人も現れていますから、注意を払わねばならないのはこちらの方ですね。 (終わり)
【拙稿参照】
小松川事件(1)―李珍宇救援を呼びかけた人たち http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/04/04/9574532
小松川事件(2)―李珍宇と書簡を交わした朴壽南 https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2023/04/08/9575512
水野・文『在日朝鮮人』(17)―小松川事件 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/08/15/8152243
第65題 在日一世の家庭内暴力 http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/dairokujuugodai
第76題 在日朝鮮人の犯罪と生活保護 http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/dainanajuurokudai
ある在日の生活保護 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/05/19/6449827
もう一人の在日の生活保護 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/05/26/6457698
在日の生活保護 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/06/16/6867746
在日の生活保護の法的根拠 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2006/07/22/455680
外国人の生活保護 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2008/04/11/3066189
在日の今後の見通し(犯罪率)について http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/11/25/6642370
「朝鮮部落」の思い出(1) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2022/07/12/9508262
「朝鮮部落」の思い出(2) http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2022/07/19/9510331
神戸の「朝鮮部落」―毎日新聞 https://tsujimoto.asablo.jp/blog/2022/08/11/9516772
コメント
_ 竹並 ― 2023/04/13 20:51
_ 辻本 ― 2023/04/13 22:03
理解に苦しむような投稿をされましてもねえ。
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僕は上記、ウトロの件、「依存症の独り言」ブログを読んでて、予備知識があるので、辻本さんの意見よりも複雑なものを感じていますが、表面的な違いに限って、単純な指摘すれば、(相変わらずの…)呼称の「非対称性」ということですね。
辻本さんの「放火」「犯罪」「日本人」というククリと、下の「爆発音」事件ですからね(w
並列すれば、韓国人による悪辣な「爆弾テロ」なんだけど、それが「爆発音」ですからね… 笑っちゃいますよ。
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靖国爆発音事件、受刑者の母「息子は日本で過酷な扱い受けている」(2017/10/26 21:18)
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/10/26/2017102603872.html