日韓学生討論会―変わらぬ日本人と変わっていく韓国人2021/11/06

 韓国の『週刊朝鮮2679号』(2021年10月18日~)最後の154頁にチョン・ジャンヨル編集長による編集後記があります。 そのなかにソウル大学が主催した日韓学生討論会で次のようなやり取りがあったと書いています。 ちょっと興味深かったので訳してみました。

去る9月にソウル大学東アジア文化研究所が主催した「韓・日大学生の虚心坦懐」という討論会について、ソウル大学東洋史学科パク・フン教授が感想コメントをペースブックに載せたものを興味深く見ました。 討論会に出席した韓国の大学生たちと日本の大学生たちとの認識差が印象深かったようです。

討論会で、日本の学生たちは相変わらずの植民地時代の加害者・被害者の論理により、韓国にどのように心からの謝罪をせねばならないのかの話をしましたが、驚くことはこのような発言に対する韓国の学生たちの反応だったといいます。

韓国の学生たちは、加害者・被害者の論理にだけ集中すれば人類史の悲劇だった植民地主義と帝国主義に対する理解が不足することにもなる、日本も植民地主義の被害者でなかったのかと「鷹揚な」主張を繰り広げたというのです。  特に日本の学生たちが、韓国に対する謝罪することなく、ひたすらBTSを追いかける日本の「分別のない」若者たちを批判するや、韓国の学生たちは「そんな大衆文化の消費者たちにまで歴史意識を強要する必要があるのか」と反駁したというのです。

ちょっと見れば、韓国の学生たちの歴史意識が浅いのではないかという批判を加えることが出来るが、わが若者たちの考えがそんな批判を受けるだけの水準を通り越しているというのが私とパク・フンの判断です。

「葉銭(一文銭のことで、韓国人が自分たちを自虐する時に使う)」とか言っていた劣等感と被害者意識、“井の中の蛙”式の民族主義に陥っていた祖父や父の世代に比べて、このごろの若者たちははるかに視野が広く、成熟しているように見えます。 これはやはり、名実ともに先進国の豊かさと自負心なかで、のびのびと育ってきたおかげではないかと思います。

 日本人学生たちが「相変わらず植民地時代の加害者・被害者の論理により、韓国にどのように心からの謝罪をせねばならないのかの話をしました」とあるのは、へー!とビックリ。 この日本の学生たちは、どうも私の知っている範囲の学生とは大きく違っています。 周囲の若い学生たちは顔も見たことのない曾祖父世代が犯したという加害に、なぜ曾孫世代である自分たちが謝罪せねばならないのか、という疑問を強く有していました。 

 また日本人学生が「韓国に対する謝罪することなく、ひたすらBTSを追いかける日本の『分別のない』若者たちを批判」と韓流ファンを卑下したところにも、かなりの違和感を持ちました。 韓国文化を楽しむのに謝罪から始めねばならないと主張するこの日本の学生さん、日本人であるがゆえに韓国に対して世代を越えて永遠に謝罪せねばならないと考えているようです。

 ですから私はこの日本人学生の「謝罪せねばならない」発言に、一般の学生の認識とはかなり違うのではないかという違和感を持ちました。

 チョン編集長は「여전히」としましたが、これは「如前」という漢字語で「前と同じ」「相変わらず」という意味です。 「加害・被害」「謝罪」は日本で昔に韓国・朝鮮に対して有すべき認識とされた風潮があって、今でもそう主張をする日本人はかなり古いタイプに属すると考えられます。 そういう認識を日本の若い学生が語ったことに、編集長は驚いたというか、むしろ新鮮に感じたのかも知れません。

 この日本人学生の発言に対し、韓国人学生が「加害者・被害者の論理にばかり集中すれば人類史の悲劇だった植民地主義と帝国主義に対する理解が不足することにもなる」 「大衆文化の消費者たちにまで歴史意識を強要する必要があるのか」と反論したとあります。 これにはビックリしました。 こんなことは以前の韓国では、日本人を前にして公然と聞くことがあり得なかった発言です。 しかし今や加害・被害にこだわっていてはいけない、と発言する韓国の若者が現れているということです。

 日本人学生の発言は残念ですが、韓国人学生の発言は韓国社会全体に広がっていってほしいですね。

【拙稿参照】

韓国人の対日感情           http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/01/12/8317218

韓国人のアンビバレントな感情   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/10/01/8690297

韓国の反日感情はいつ形成された? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2017/10/08/8698008

世界で唯一日本を見下す韓国人   http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/10/06/8216253

日本を見下す韓国(2)         http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2016/12/22/8285733

糾弾する朝鮮人と反論できない日本人 http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daijuuhachidai

コメント

_ 河太郎 ― 2021/11/08 11:41

辻本さん<日本人学生たちが「相変わらず植民地時代の加害者・被害者の論理により、韓国にどのように心からの謝罪をせねばならないのかの話をしました」とあるのは、へー!とビックリ。>

自虐史観の再生産はまだまだしぶといですね。事実の直視ではなく、日本の朝鮮統治は悪だ、の偏見・固定観念そのものです。

辻本さん<この日本の学生たちは、どうも私の知っている範囲の学生とは大きく違っています。>

私は学生とは直接には接することはありませんが、日本共産党の下部組織の民青は自虐史観バンバンですね。

辻本さん<韓国文化を楽しむのに謝罪から始めねばならないと主張するこの日本の学生さん、日本人であるがゆえに韓国に対して世代を越えて永遠に謝罪せねばならないと考えているようです。>

アメリカならそら大変ですね。黒人の歌手、俳優、スポーツ選手、政治家などには先ず奴隷制度のことを前振りしないといけないとなると、黒人の超一流のスーパースターからは、バカにするな、と猛反発でしょうね。黒人だからではなく、オレだからだ、と。
韓国人の多くの分野のスターからも、ゲタをはくなどマッピラ御免だと逆ネジでしょう。

辻本さん<韓国人学生の発言は韓国社会全体に広がっていってほしいですね。>

韓国の教育界、政治家やマスコミなどが、ウソの歴史から離れて、在って欲しかった歴史ではなくて、在った歴史を認めない限りダメですね。

根本は、歴史認識は国や民族で異なることを認めて、己の歴史観を他国に押し付けないこと、他国の歴史教育に干渉しないこと、これしかありません。

_ 辻本 ― 2021/11/08 21:29

>私は学生とは直接には接することはありませんが、日本共産党の下部組織の民青は自虐史観バンバンですね。

 これにはビックリ。 学生と接していないのに、民青のことを知っているとは! 今は学生でない民青同盟員が増えているのですか? 民青は学生でなくても加入は可能ですが、近年ではそんな話を聞いたことがありませんので。

_ 竹並 ― 2021/11/08 23:06

個人的には、最近、日韓で話題になった本、『反日種族主義』(李栄薫)が全く話題になっていない点に、この「日韓学生討論会」と称するものの性格の「暗さ」を感じますね(「韓国社会の暗さ」でいないことを念じます)。

_ 辻本 ― 2021/11/09 07:31

『反日種族主義』をあまりに高く評価しすぎておられるようです。
韓国では、出た当初は若干の話題になりましたが、今はもう忘れられたと言っていいものです。
日本では、嫌韓派でやってきた人なら知っているでしょうが、若い学生さんはどうですかね?

_ 河太郎 ― 2021/11/09 09:33

辻本さん<これにはビックリ。 学生と接していないのに、民青のことを知っているとは! >

数十年前に大学紛争を非過激派・保守として見ていた私なので、辻本さんの情報をもとにアップデートしましょう。
今の民青は知りませんが、今の共産党を見ての予測はそう外れていないでしょう。
件の学生たちが民青系統ではない別のグループとご存じなら教えて下さい。

辻本さん<『反日種族主義』をあまりに高く評価しすぎておられるようです。>

韓国の事情はマスコミ報道を通してしか知りませんが、韓国で10万部以上のベストセラーしかも真面目な内容の本が1年も経てば忘れられてしまうというのが韓国とすれば、韓国はそんな国として扱いましょう。

_ 辻本 ― 2021/11/09 15:00

>今の民青は知りませんが、今の共産党を見ての予測はそう外れていないでしょう。

 根拠のない憶測であることを認められるのですね。 なにしろ「今の民青は知りません」と堂々とおっしゃるのですから。
 
>韓国はそんな国として扱いましょう。

 実際の韓国を知らないで発言していることを認められるのですね。 韓国語すらご存じないようですから、仕方ないですね。

_ 河太郎 ― 2021/11/09 17:15

辻本さん<根拠のない憶測であることを認められるのですね。 なにしろ「今の民青は知りません」と堂々とおっしゃるのですから。>

今の共産党から今の民青を見るのが、「根拠のない憶測」とは思いませんが。
民青が共産党の下部組織であると見るのが間違いであれば、それは憶測になるかもしれませんが。


辻本さん< 実際の韓国を知らないで発言していることを認められるのですね。 韓国語すらご存じないようですから、仕方ないですね。>

そうです。韓国の情報は、韓国新聞の日本語版と、日本人の著作発言、韓国書籍の日本語訳です。
これだけでも韓国の理解はそれなりに可能です。

英語を原語で文章にしろ会話にしろ理解できなければ、アメリカや英国について語る資格なし、となるのですかね。

世界で翻訳文化が隆盛なのはどう説明するのですかね。

世界に有益とするのか、商売のアダ花に過ぎないのか、ですね。

_ 辻本 ― 2021/11/10 21:27

民青から情報を得ていないのに、「民青は自虐史観バンバンですね」と言った、ということですね。 つまり捏造と言わざるを得ません。

韓国を論じるならば自分が韓国語を知っている、或いは身近に語学スタッフがいるべきでしょう。 そうでなければその発言は、単なる個人的な感想にしか過ぎません。 
他国を論じ、時には批判するのなら、当然のことと考えます。

_ 辻本 ― 2021/11/10 21:46

特定国を研究するのに、その国の言葉を知っていることは当然です。
そうでなければ、検証することが出来ないものですから、単なる個人的感想です。
ああそうですか、どうぞご勝手に想像を膨らませてください、としか言いようがありませんね。

_ 辻本 ― 2021/11/10 22:47

外国を「論じる」ことと「個人的感想」との違いについて、誤解を恐れず例を挙げて説明します。

例えば外国を旅行して、「ゴミが散らかっている、汚い国だなあ」というのが「個人的感想」。 個人的体験ですから人それぞれであり、検証できません。

「こんなに汚いなんて、この国の民度は低い」といえば、「民度」とは何で、それをどうやって測るのかを検証できますから、この国を「論じる」ことになります。
その際には、その国の言葉を知っておかなくてはなりません。
その検証をせずに「民度は低い」と論じるのは、誹謗・中傷と言わざるを得ません。

※コメントの受付件数を超えているため、この記事にコメントすることができません。

トラックバック