外国と日本の文化の違い―卑猥語(2) ― 2021/03/18
http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/02/28/9351491 の続きです。 ここで「外国人の名前には日本では卑猥語に相当するものになる場合がある」と書きましたので、続けてこれについて書きます。
外国人の名前には日本の卑猥語に相当する場合があります。 また日本で生まれ育った外国人の場合、その名前が本国では卑猥語になって本国では受け入れられないということもあります。 来日外国人が外国人登録すると普通カタカナ名が記載されますが、そのカタカナ名が本国で卑猥語に聞こえる場合もあります。 逆に日本人ではごく普通の名前が、外国では卑猥語になる場合もあります。 それぞれを例示します。
「外国人の名前が日本の卑猥語に相当する場合」というのは例えば、①昔プロレスラーに「ボボ・ブラジル」という人がいました。 「ボボ」は日本のある地方の卑猥語です。 ですからその地方でこのレスラーが出場するプロレス会場は異様な盛り上がりを見せたものでした。 ②またこの地方にフランスの女性哲学者「ボーヴォアール」が講演に来た時、地元の人は「ボーヴォアールはやはり女だった。“ボボ・アール”だから」なんて噂していました。
③あるいは1960年代にアフリカのコンゴに「チョンベ」大統領が誕生しました。 「チョンベ」は日本の某地方の卑猥語です。 この地方ではこのニュースを聞いた時、みんなビックリしたと言います。 ④韓国人では「好美」という女性がおられました。 ハングル読みで「ホミ」となりますが、これも日本の某地方の卑猥語です。 この地方出身の方に聞くと、それを若い女性が聞くと顔を赤らめ体を震わせるだろうと言っていましたね。 幸いにもこの韓国人はその地方に住まなかったですが、住んでいたら大変なことになっていたでしょう。
「日本で生まれ育った外国人の場合、その名前が本国では卑猥語になって本国では受け入れられない」というのは、⑤在日韓国人ですが「早智」という名前の女性がいました。 これをハングル読みすると「チョジ」となり、これは韓国では男性のペニスの意味になります。 つまりオチンチンですから、本国では絶対に付けることのない名前だそうです。 在日韓国人は本国の韓国文化と断絶する場合がほとんどですので、このように本国文化に馴染まない名前が出てくることがあります。
「来日外国人の外国人登録名が本国で卑猥語に聞こえる場合」というのは、これも私の職場の十年ほど前のことですが、⑥アフリカからの留学生がアルバイトを申し込んだ時に、賃金を振り込む銀行口座名義と印鑑名が違うということがありました。 事情を聞くと、外国人登録のカタカナ名を日本語のイントネーションで発音されると、本国では卑猥語か罵倒語に聞こえるそうです。 だから通名を作って登録してそれで口座名義を替えた、しかし印鑑は買い換えるのにお金がかかるからそのままにした、ということでした。
「日本人ではごく普通の名前が、外国では卑猥語になる場合」というのは例えば、 ⑦「伴(ばん)」さんという名前の日本人がいます。 マンガ「巨人の星」にも出てきますね。 そして「バン」はアメリカの某地方の卑猥語だそうです。 ですから「伴」さんがアメリカのこの地方に住むことは難しいという話でした。 ⑧同じように日本人では「まこと」「ことみ」のような名前はごく普通です。 しかしドイツの某地方では「こと」を日本語風の発音とイントネーションで話すと卑猥語になるとのことでした。 以上は聞いた話で確実ではありませんが、可能性は十分にあるものです。
これはかなり昔の話ですが、⑨ロシアから日本のボクシングジムに入った青年がいました。 かなり成績がよくて日本でプロデビューすることになり、日本のジムは彼に昔の日本チャンピョンだった「海老原(エビハラ)」というリングネームを付けました。 しかし彼はそれでやる気を失くし、祖国に帰りました。 「エビハラ」は祖国の自分の地方では卑猥語か侮蔑語になるので両親に言えず故郷に錦を飾れない、ということでした。
口にできないような卑猥語は世界のどこにでもあります。 そして外国と日本では文化が違いますから、卑猥語も違ってきます。 ですから、外国ではごく普通の名前が日本では卑猥語になるとか、逆に日本ではどうということのない普通の名前が外国では卑猥語になる場合もあります。
もしこんな名前の外国人が住んでいたら、子供や心無い大人たちはからかいの絶好の対象とするでしょう。 口にするのも恥ずかしい卑猥語を叫んでも外国人の名前を呼んだだけだと居直るだろうし、デパートなんかで「この人を呼び出してください」といってその外国人の名前を出すとか、様々な手口を使うことでしょう。
日本では外国人は通名をつけて登録することができます。 そうするとその通名で銀行口座を開いたり、様々な契約を結ぶことも可能になります。 ですから日本では卑猥語となるような名前を持つ外国人には、“それでは日本での生活に支障をきたしますから通名を作って登録しなさい”と忠告してあげるのが最善だと考えます。 またそれが人権を守ることにもなります。
ところが数年前ですが、外国人には通名を認めてはならないと強硬に反対する日本人が多いことにはビックリしました。 特定の国の外国人の通名(日本名)に、異常なほどの反対を主張します。 その主張をよくよく見ると、外国人を晒し者にして差別したいというのが本音でした。 “通名を使うな!通名反対!”は人種差別主義者=レイシストの主張だったのです。 (続く)
【拙稿参照】
人に卑猥語を言わせるトンデモ俗悪人 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2021/02/28/9351491
外国人の通称名はワガママか http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2006/09/09/516945
外国人が日本名(通名)を使う理由 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/11/23/6640875
外国人の名前が日本文化に馴染まない例 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/12/17/6662794
出自を隠すための通名には事情がある http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/12/21/6666178
「通名禁止」主張はレイシズム http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/12/29/6673689
二つの名前を持つこと http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/06/27/6493072
在日の本名とは? http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/07/01/6497383
通名を本名と自称する在日 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/07/04/6500499
日本名を本名とする在日朝鮮人 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2012/12/18/6663657
通名禁止、40年前から「左」が主張と実践 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/01/05/6681269
在日の通名使用の歴史は古い http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/01/12/6688526
ある在日の通名騒動記 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/07/16/6904707
通名・本名の名乗りは本人の意思を尊重せねば http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/07/28/6925152
外国人が通名で銀行口座を設ける場合 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/08/13/6945717
外国人の名前 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/08/16/6948002
在日の通名は特権ではない http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/10/23/7019964
通名登録制度を悪用した事件 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2013/11/02/7031887
本名強要は人格権侵害ー判決 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2015/04/24/7618561
第21題 「本名を呼び名乗る運動」考 http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/dainijuuichidai
第85題 (続)「本名を呼び名乗る運動」考 http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daihachijuugodai
第84題 「通名と本名」考 http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daihachijuuyondai
コメント
_ 竹並 ― 2021/04/01 18:36
_ 辻本 ― 2021/04/01 22:46
放送禁止用語ですから、韓国ドラマには出てきません。 出てくるのは韓国映画です。 暴力場面では、この言葉のオンパレードですね。
日本語字幕では「バカ!」「こいつ!」とかになりますが、元は口にするのも恥ずかしい卑猥語です。
それ以外にも罵倒語はいろいろあるようです。「お前の母ちゃん、デベソ!」と同じような韓国語がありましたが、覚える必要もないので、もう忘れてしまいましたね。
こういう類の言葉は、なまじっか知っていると、返ってコミュニケーションの妨害になりますから、最初から知らないようにしています。
_ 竹並 ― 2021/04/02 13:48
なかなか微妙な問題(question)にお答え頂き、感謝です。
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これは(恐らく)ユーリー・アルバチャコフ選手に関わるエピソードで、ロシア語学習者には「ヱビス・ビール」に絡んで、戦前から有名な故事だったと記憶します。
ところで、卑猥語と関係のある罵語、特に朝鮮語の罵語について伺いたいのですが… 朝鮮語にシナ語の「ターマーダ」、英語の「ファックヨーマザー」に当たる罵語はあるのでしょうか?
昔、司馬遼太郎が月刊「文芸春秋」の巻頭に随筆を書いていた頃だったと記憶しますが、金達寿(キム・タルス)氏が少年時代に、父親と一緒に渡日し、日本人の少年相手に(罵語のつもりで…)「俺は、お前の御爺さんだぞ!」と言ったが全然通じなかった、というエピソードを書いていました。
が、このエピソード、シナ語学習者なら「それ、我孫子(あびこ)さん、の朝鮮語バージョンぢゃないの?」と、ピーンと来る話だと思います。
で、我孫子(あびこ)さんが、なぜ、罵語なのかと言うと、先祖に逆のぼって「ターマーダ」なわけで、ひどい侮辱になる、という構造だと理解しております。
してみると、朝鮮語にも「ターマーダ」「ファック***」系の罵語があるハズだと推察いたしますが、いかがでしょうか?